インドネシア大統領盗聴疑惑、政権中枢を揺るがす、プラボウォ氏と前大統領の対立激化か

事件の政治的背景として注目されるのが、プラボウォ氏とジョコ・ウィドド前大統領の関係悪化だ。
インドネシア、首都ジャカルタ、プラボウォ大統領(AP通信)

インドネシアのプラボウォ(Prabowo Subianto)大統領や政治家、ジャーナリストらの電話が違法に盗聴されていた疑惑が、政権を揺るがしている。捜査当局は今月、元国家警察長官で大統領首席補佐官を務めていたリストヨ・シギット・プラボウォ(Listyo Sigit Prabowo)氏ら警察幹部を逮捕。11月6日には別の警察幹部が捜査対象になった。現職大統領が自国の警察組織に監視されていた可能性が浮上し、政治的な緊張が高まっている。

捜査当局によると、盗聴は2025年初めから今年にかけて行われ、プラボウォ氏のほか、政府高官、報道関係者、政府職員、企業経営者、市民団体関係者らが対象になった疑いがある。盗聴データは削除されたとみられるが、誰が指示し、情報をどこに提供したのかは明らかになっていない。

大統領府の報道官は、プラボウォ氏の通信を傍受する行為は反逆に当たる可能性があると指摘した。警察は13人の警察官や関係者から話しを聞いている。

事件の政治的背景として注目されるのが、プラボウォ氏とジョコ・ウィドド(Joko Widodo)前大統領の関係悪化だ。プラボウォ氏は2024年の大統領選でジョコ氏の支持を受けて当選し、同氏の長男ギブラン(Gibran Rakabuming Raka)氏を副大統領に起用した。

しかし、首都移転計画への予算削減やギブラン氏の政権内での役割をめぐり、両者の間には溝が広がっている。逮捕されたリストヨ氏はジョコ氏に近い人物とみられてきた。

さらに、ギブラン氏の副大統領就任資格をめぐっても問題が再燃している。憲法裁判所と最高裁は、同氏の学歴資格が国内法の要件を満たしていなかったと判断しており、議会で罷免手続きにつながる動きが検討されている。

首都ジャカルタでは軍部隊2万人以上が警戒態勢に入った。軍は治安維持や国家主権の防衛が目的だと説明し、盗聴疑惑との直接的な関係を否定している。プラボウォ氏は物価高や通貨安、投資家の信頼低下にも直面しており、政権運営への圧力が強まっている。

捜査の結果次第では、現職大統領と前大統領をめぐる対立がさらに深まり、政治情勢を不安定化させる可能性がある。

あなたへのおすすめ