ディワリ祝祭と冬の大気汚染が重なるインド、専門家が呼びかける健康被害を防ぐ対策

南アジアでは、交通機関や工場からの排出ガス、建設現場の粉じん、野焼きなどが大気汚染の主な原因となっている。
2025年10月20日/インド、ムンバイで開催されたディワリの花火大会(AP通信)

インドをはじめ南アジア各地でヒンズー教の祭典「ディワリ」が始まる一方、冬の到来とともに大気汚染が深刻化している。ディワリは「光の祭典」とも呼ばれ、世界で約10億人が祝う行事だ。伝統的に花火や爆竹を使用するが、すでに汚染された空気に大量の煙や微粒子が加わることで、健康への危険が一段と高まると専門家は警告している。

南アジアでは、交通機関や工場からの排出ガス、建設現場の粉じん、野焼きなどが大気汚染の主な原因となっている。冬場は風が弱まり、大気が停滞しやすい。さらに地表付近に冷たい空気が滞留し、その上に暖かい空気がふたをするような状態になると、汚染物質が拡散せず、地上に蓄積する。こうした現象はパキスタンや中国の一部でも深刻なスモッグを引き起こしている。

インドの首都ニューデリーでは、状況が特に厳しい。昨年のPM2.5(微小粒子状物質)による大気汚染は、世界保健機関(WHO)が示す年間指針値の約19倍に達した。過去数年間には、大気汚染測定器の表示上限を超える数値が記録されたこともある。人口2000万人を超える同市では、建設工事や産業活動、車両の使用を一時的に制限する措置が取られてきたほか、電気自動車の普及を目指す長期計画も進められている。しかし専門家は、こうした臨時措置だけでは汚染の根本的な解決には至らないと指摘する。

インドの大気質指数(AQI)は201~300を「悪い」、301~400を「非常に悪い」、401~500を「深刻」と分類する。深刻な水準では、持病のない健康な人にも悪影響が及ぶ可能性がある。外出する際には、政府機関や民間の大気質情報サイトで最新の数値を確認することが重要だ。市全体の平均値だけでは地域ごとの汚染状況を把握できないため、できるだけ近隣の測定地点のデータと更新時刻を確認するよう専門家は勧めている。

汚染が強い日に屋外へ出る場合、専門医は顔に密着するN95またはN99規格のマスクを推奨する。N95は空気中の粒子を少なくとも95%、N99は少なくとも99%捕集する性能を持つ。ただし、有害ガスを除去するものではない。鼻と口、あごを覆い、鼻の部分を調整して隙間ができないように装着する必要がある。ひげなどが密着を妨げる場合もある。汚れたり破損したり、呼吸しにくくなった使い捨てマスクは交換する。布マスクや緩いサージカルマスク、スカーフでは微小粒子への防御は期待できない。また、汚染が強い時間帯、とりわけ早朝には、屋外での激しい運動を避けるべきだという。

室内では、部屋の広さに適した空気清浄機を使用することが有効だ。微粒子を捕集するHEPAフィルターを備えた製品を選び、清浄能力を示すクリーンエア供給率(CADR)も確認する。寝室など長時間過ごす場所に設置し、空気の吸い込み口や吹き出し口をふさがず、継続的に運転することが望ましい。活性炭フィルターは一部のガスを除去できるが、すべての汚染物質を取り除けるわけではない。肺を刺激するオゾンを意図的に発生させる機器も避ける必要がある。

室内の汚染を減らすには、線香や蚊取り線香、ろうそくの使用を控えることも重要だ。煙や粒子は換気の悪い部屋に長時間残る場合がある。調理時の煙を減らし、屋外へ排気する換気設備を使うことも推奨される。床や家具の掃除では、ほこりを舞い上げる乾いた掃き掃除を避け、湿らせたモップや布で拭き取る方法が有効だ。

ディワリの祝い方そのものを見直すことも対策の一つとなる。花火や爆竹による汚染は、天候によっては一晩中残る。多くの家庭が同時に使用すれば、参加していない住民まで煙にさらされる。専門家は、火薬を使う花火の代わりに電飾を利用するなど、煙を出さない祝い方を提案している。

ただし、マスクや空気清浄機による対策には限界がある。屋外で働く人は簡単に外出を控えられず、空気清浄機を購入できない家庭も少なくない。公衆衛生の専門家は、個人の予防策だけでなく、汚染源を継続的に減らす政策と、すでに健康被害を受けた人が利用できる手頃な医療体制が必要だと訴える。

祝祭の時期に大気汚染が悪化する問題は、個人の注意だけでは解決できない。健康被害を抑えるための対策を講じると同時に、交通、産業、農業など幅広い分野で排出源を減らす取り組みが不可欠となっている。

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