中国で広がる「偽装通勤」、失業を家族に隠す若者たち、雇用不安とAI普及が背景に
専門家は、偽装通勤が失業者の体面を守り、家族間の摩擦や社会的不満を和らげる側面があると指摘する。
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中国で、失業していることを家族に隠すため、毎朝出勤するふりをして自宅を出る「偽装通勤」が広がっている。景気減速や不動産市場の低迷、人工知能(AI)の普及などを背景に就職が難しくなる中、親族からの心配や就職を促す圧力を避け、体面を保とうとする動きだ。関連する投稿は中国のSNSで数億回規模の閲覧を集め、社会問題として注目されている。
国有不動産企業で働いていた32歳の女性、ココ・リー(CoCo Lee)さんは、仕事量の多さと評価の低さを理由に退職した。失業を母親に知られれば、母親が不安を募らせ、その心配が自分にも伝わると考え、仕事を辞めたことを隠している。自宅で作った昼食の写真を家族のグループチャットに投稿しようとした際も、平日に家にいる理由を尋ねられる可能性に気づき、投稿を思いとどまったという。
偽装通勤をする人々は、公園や図書館、カフェ、ショッピングモールなどで日中を過ごす。SNSでは、親族に仕事について聞かれた際の対応や、家に居続けずに済む場所を紹介する投稿が相次ぐ。動画投稿アプリ「抖音(ドウイン)」では関連コンテンツの閲覧数が6億1000万回に達し、SNS「小紅書(RED)」でも7000万回を超えた。
28歳のスーザン・スン(Susan Sun)さんは、インターネット企業を解雇されたことを2025年末ごろから隠している。重慶市の自宅に母親と継父が移り住んだため、午前9時前に家を出て午後6時以降に帰宅する生活を続ける。失業給付の月額1864元と退職時の補償金で暮らしているが、経済状況を心配する親から節約を促されることが精神的な負担になっているという。
背景には、雇用環境の悪化がある。輸出に依存する中国経済では、製造業の競争激化により企業が値下げや人員削減を進め、残った従業員の負担も増している。不動産不況や地方政府の財政難に加え、AI導入や自動化も雇用と所得を圧迫する要因となっている。
専門家は、偽装通勤が失業者の体面を守り、家族間の摩擦や社会的不満を和らげる側面があると指摘する。一方、日本や韓国の1990年代と比べて中国の社会保障網は十分とはいえず、生活資金が尽きれば家族や親族に頼らざるを得なくなる可能性もある。
偽装通勤の広がりは、経済の高度化やAI活用を進める政府が、雇用の安定と社会的な安心をどう両立させるかという課題を浮き彫りにしている。
