インド豪雨、ガネーシャ像職人を直撃、祭礼前の生産停滞で地域経済に打撃
ガネーシャ・チャトゥルティは知恵や繁栄の神として信仰されるガネーシャをたたえる祭りで、毎年数百万体の像が家庭や地域の祭壇に飾られる。
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インド西部マハラシュトラ州で発生した記録的な大雨と洪水が、ヒンズー教最大級の祭礼「ガネーシャ祭り(ガネーシャ・チャトゥルティ)」を支えるガネーシャ像の製作現場に深刻な影響を及ぼしている。祭礼を目前に控えた重要な生産時期に工房が浸水し、多くの完成品や製作途中の像が損壊したことで、職人や関連事業者が大きな経済的損失に直面した。
ガネーシャ・チャトゥルティは知恵や繁栄の神として信仰されるガネーシャをたたえる祭りで、毎年数百万体の像が家庭や地域の祭壇に飾られる。祭礼終了後には像を川や海へ奉納する慣習があり、その需要を支える像作りは地域の重要な産業となっている。多くの工房では祭礼の数カ月前から昼夜を問わず製作が進められ、家族経営の小規模工房が生産の中心を担っている。
しかし、今年はモンスーンの大雨によって河川が氾濫し、低地にある工房の多くが浸水した。乾燥途中の粘土製の像は水を吸って崩れ、色付けや装飾を終えた完成品も泥水に浸かった。木製の型や塗料、装飾品、電動工具なども使用できなくなり、職人たちは積み重ねてきた数カ月分の作業を一夜で失ったという。
被害を受けた職人の中には、銀行や知人から資金を借りて材料を仕入れていた人も少なくない。祭礼前の売り上げは年間収入の大半を占めるため、この時期の生産停止は生活そのものを脅かす問題となっている。注文を受けていた像を納品できなければ代金を受け取れず、借入金の返済も難しくなる。洪水後は工房の清掃や設備の修復に追われる一方、新たな材料を購入する余力がなく、生産再開のめどが立たないケースも目立つ。
影響は職人だけにとどまらない。像の彩色を担う画家や装飾品を製造する業者、輸送会社、小売店など祭礼を支える幅広い産業にも波及している。例年であれば祭礼前は地域経済が最も活気づく時期だが、今年は商品不足や納期の遅れが相次ぎ、経済活動全体の停滞が懸念されている。
さらに近年は環境保護の観点から、石こう製ではなく粘土や天然素材を使用した環境配慮型のガネーシャ像への需要が高まっている。しかし、こうした素材は水に弱く、洪水による被害を受けやすいという課題も浮き彫りにした。職人たちは環境への配慮と自然災害への備えを両立させる難しさに直面している。
専門家は、気候変動の影響でインドでは極端な降雨が増加する傾向にあると指摘している。都市化の進展による排水機能の低下や河川周辺での開発も洪水被害を拡大させる要因となり、伝統産業を守るためには防災インフラの整備や小規模事業者への支援制度の充実が求められている。
被災した職人たちは泥をかき出し、壊れた像の残骸を片付けながら、祭礼までに少しでも多くの像を完成させようと作業を再開している。ガネーシャは障害を取り除く神として知られる。その像を作る職人たちは、自らが直面する困難を乗り越えようと懸命な努力を続けているが、豪雨が残した爪痕は地域社会と伝統産業に長く影を落としそうだ。
