インドの政治風刺漫画家、SNSで表現規制に直面、オンラインで築いた読者層、政府の削除要請が脅威に

モディ政権は違法なコンテンツへの対処や公共の秩序の維持を目的として、情報技術関連法令に基づく措置を正当化している。
インドのイラストレーターのイメージ

インドで政治風刺漫画をソーシャルメディアで発信してきた漫画家たちが、投稿やアカウントへのアクセス制限に直面している。新聞社などの既存メディアに依存せず、インターネットを通じて幅広い読者を獲得してきたが、政府当局の要請を受けて投稿が制限される事例が相次ぎ、表現の自由を巡る懸念が強まっている。

漫画家のサティシュ・アチャリヤ(Satish Acharya)氏は今月、インスタグラムのアカウントがインド国内で一時的に閲覧できなくなった。3週間ほど前にも同様の措置を受けており、利用者が検索してもプロフィールを見つけられず、リンクからもアクセスできない状態となった。画面には、インドの情報技術関連規則に基づき、法的要請に従ってアクセスを制限したとの説明が表示された。アチャリヤ氏は運営会社メタに問い合わせたが、具体的な理由について説明を得られなかったという。

別の漫画家も、インド選挙管理委員会による有権者名簿の改訂を批判した漫画の投稿を制限された。問題となった改訂では、約1億3000万人の名前が有権者名簿から削除されたとみられ、政治的な論争を呼んでいる。漫画家たちは、批判的な表現がどのような法的根拠で制限されたのか、十分な説明がないことを問題視している。

モディ政権は違法なコンテンツへの対処や公共の秩序の維持を目的として、情報技術関連法令に基づく措置を正当化している。一方、表現の自由を擁護する人々は、政治風刺への規制が権力批判を萎縮させると警告する。地元紙インディアン・エクスプレスは、政府機関が2026年3月から7月にかけて、インスタグラム、フェイスブック、ユーチューブなどのプラットフォームに約19万5000件のコンテンツ遮断・制限命令を送ったと報じた。ただし、命令のうち実際に何件の投稿やアカウントが制限されたのかは明らかになっていない。

政治風刺はインドの報道文化で長い歴史を持つ。著名な漫画家R・K・ラクシュマン(R. K. Laxman)氏が描いた庶民の象徴「コモンマン」は広く知られ、1970年代の非常事態宣言下にも検閲に抗して描き続けた漫画家がいた。2012年には、憲法を風刺した漫画を巡り、漫画家アシーム・トリヴェディ(Aseem Trivedi)氏が扇動罪で逮捕されたが、後に釈放された。

近年、SNSは独立系漫画家にとって、新聞社やテレビ局を介さずに作品を発表できる重要な場となっている。漫画家のラチタ・タネジャ(Rachita Taneja)氏は、インターネットがなければ自身の活動は成立しなかったと語る一方、プラットフォームが広告収入を重視する営利企業であることにも懸念を示す。運営企業が政府の要請に応じれば、創作者は読者との接点を突然失いかねない。

新聞社に所属する漫画家も、扱う題材や説明文を控えめにするなど、明示的な命令がなくても自己検閲が広がる可能性を指摘する。モディ政権は国内メディアの自由を否定する批判に反論しているが、今回の問題はオンラインで活動の場を広げた表現者が、同時にプラットフォームと政府の規制に依存するという構造的な弱点を浮き彫りにしている。

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