コンテンプト・オブ・コート 7-28
アンカレッジ市役所、市長室。
コールはデスクに座り、書類に目を通していた。ハミルトン・ナショナル・バンクへの捜査は続いている。ドミニクの逮捕によって、これまでの資金の流れが明らかになる可能性があった。コールはカーターが検察に情報を流したと疑っていた。しかし、カーターは何も語らず、ジョニーからも有力な情報は届いていなかった。
ドアが開いた。
ジューン・アトキンソンが入ってくる。受付を通した職員が後ろから声をかけたが、彼女は振り返らなかった。
「コール市長」
コールが顔を上げた。
次の瞬間、乾いた音が室内に響いた。
ジューンの平手打ちが、コールの頬を打った。コールの顔が横を向き、手にしていたペンがデスクの上に転がった。
「このくそったれ、よくも娘を騙したわね」
コールはゆっくりと顔を戻した。頬に手を当て、ジューンを見た。
「……いきなりですか。これでチャラにしましょう」
「ふざけないで!」
ジューンは一歩踏み出した。
「ラングドンに会ってきたわ。刑務所で、あいつから全部聞いた。市長殺害現場の証拠を捏造したのは、あなたの指示だったそうね」
コールは黙っていた。
「検事に偽の証拠を作らせ、カーターを犯人に仕立てた。エルマはあなたのせいで崖っぷちに立たされている」
「話はそれだけですか?」
コールは椅子から立ち上がった。
「市長に向かって、ずいぶん偉そうな口を利くじゃないか」
「この野郎!」
ジューンが近づいた瞬間、コールは彼女の首をつかみ、壁際へ押しつけた。
「覚えとけ。俺は市長だ。偉そうにできるのも今日が最後だ」
ジューンはコールの腕をつかんだ。
「もっと頭を使え。先を読まないと、全員地獄行きだぞ」
コールは手に力を込めたまま、声を落とした。
「裁判官は今、ドミニクCEOの件で腹を立てている。銀行の捜査が進み、財団や会社にまで疑いが及べば、裁判官も大変なことになる。俺たちがしくじれば、全員が巻き込まれるんだ」
ジューンは苦しげに息を吐きながら、コールをにらんだ。
「だからといって、娘を騙していい理由にはならないわ」
コールはようやく手を離した。ジューンは壁に手をつき、咳き込んだ。
「今はそんな話をしている場合じゃない」
コールは彼女の肩をつかみ、乱暴に突き飛ばした。ジューンはよろめき、近くの椅子に手をついた。
「今すぐ裁判官のところに行け」
「何をしろというの?」
「余計なことをせず、指示を仰げ。この間抜け!」
ジューンは首元を押さえ、コールを見た。
「あなたの指示を伝えろというの?」
「俺の命令じゃない。裁判官の判断を仰ぐんだ。今、勝手に動けば事態を悪化させるだけだ」
ジューンはしばらく黙っていた。エルマのことを考えれば、ここでコールと争っている場合ではない。だが、彼の言葉をそのまま受け入れるつもりもなかった。
「……クソ野郎」
ジューンはドアへ向かった。
「余計なことはするな」
背後からコールの声がした。
ジューンは振り返らなかった。
