中国、牛の精液輸入を再開、各国上位10%の種雄牛に限定、牛肉・乳製品の生産性向上目指す
中国は2021年、家畜の遺伝資源の自給を国家安全保障上の優先課題に位置づけ、国内の育種施設にも投資してきた。
.jpg)
中国が牛の品種改良に使う種雄牛の精液輸入を再開した。2019年から2025年にかけて、米国や欧州、カナダ、オーストラリアなどからの家畜や精液の輸入が相次いで制限され、牛の遺伝資源をめぐる国際取引は大きく縮小していた。中国は今回、輸入対象を原産国で遺伝的に優れた上位10%の種雄牛に限定する厳格な基準を導入した。牛肉の生産量や乳牛の収益性を高め、拡大する食料輸入への依存を減らす狙いがある。
オーストラリアでは、筋肉質で成長が速く、肉質にも優れるアンガス種の種雄牛「ユートピア」から、週2回、精液が採取されている。精液は数百万個の精子を含む細いプラスチック製のストローに小分けされ、液体窒素で凍結保存された後、中国へ輸送される。オーストラリアとカナダの供給業者は出荷を増やしており、米国と英国も今後、輸出を認められる可能性がある。
背景には、中国の畜産業が抱える生産性の問題がある。米農務省のデータによると、中国の肉牛の枝肉重量は平均約150キログラムで、米国の約400キログラムを大きく下回る。乳牛の生産性にも差がある。優れた遺伝形質を導入すれば、牛の成長を速め、飼料の消費量を抑えながら、肉質や乳量を改善できる。輸入精液は高性能な牛を生み出すだけでなく、国内の牛と交配して、従来より生産性の高い子牛を育てることにも使われる。
需要を押し上げているのは食生活の変化だ。所得の増加に伴い、中国の消費者の間では、アンガス種や和牛など、品質の高い牛肉への関心が高まっている。中国の公式統計によると、2024年の牛肉消費量は10年前のほぼ2倍、乳製品の消費量も約3割増加した。牛肉に加え、生クリーム、チーズ、バターなどの輸入額は年間250億~300億ドルに達している。中国政府は国内生産の強化を通じ、こうした輸入負担を軽減したい考えだ。
ただし、輸入再開後も供給は限定的だ。各出荷は専門家による審査を受け、上位10%という基準を満たすか確認される。審査には4カ月以上かかる場合があり、基準に適合しないとして一部しか承認されない出荷もある。中国の監査チームは2025年、オーストラリアにあるユートピアの飼育施設を検査した。中国が海外の供給元に求める管理水準の厳しさがうかがえる。
中国税関の統計では、2026年8月末までにオーストラリアとカナダから輸入された精液は合計9万2573ストロー、金額にして約70万ドルだった。輸入制限前には年間約1000万ストローを輸入していたため、回復はまだ初期段階にある。一方、オーストラリアの遺伝資源企業ABSグローバルは、今後1年間で和牛、アンガス種、ホルスタイン種、ジャージー種の精液約20万ストローを中国向けに出荷する計画だ。これは同社が他の全市場に出荷する量を上回るという。
中国は2021年、家畜の遺伝資源の自給を国家安全保障上の優先課題に位置づけ、国内の育種施設にも投資してきた。しかし、業界関係者によると、国内の育種技術は依然として欧米などに後れを取る。輸入制限中には、供給不足からモンゴル、カザフスタン、ベトナムなどの周辺国を経由し、精液や生きた牛を密輸する生産者もいたという。
中国の最終目標は、海外の優良な遺伝資源を活用して国内の育種技術を引き上げ、将来は輸入国から輸出国へ転換することだ。ただ、海外企業も自社の優れた種雄牛を供給しながら、さらに高性能な牛を育成し続ける。中国が厳しい輸入基準と海外技術の導入を通じて、世界水準の畜産業を実現できるかが問われている。
