SHARE:

チリ政府、危険度が高い受刑者295人を高セキュリティ刑務所に移送

チリは中南米の中では比較的安全な国だが、誘拐や恐喝、麻薬取引、国際犯罪組織の拡大が国民の不安を高めている。
2026年1月30日/エルサルバドル、中部テコルカの刑務所を視察するチリのカスト大統領(中央右)(AP通信)

チリ政府は13日、国内の危険度が高い受刑者295人を、首都サンティアゴから約250キロ南方にある新設のラ・ラグナ刑務所に移送した。組織犯罪への対策を主要公約に掲げる右派のカスト(José Antonio Kast)大統領が現地を訪れ、移送を指揮した。政府は刑務所の過密状態を緩和するとともに、収監された犯罪組織の首領が獄中から外部の犯罪活動を指揮するのを防ぐ狙いがあると説明している。移送された受刑者のうち37人は犯罪組織の構成員で、今後1週間でさらに約100人を移送する予定だ。

ラ・ラグナ刑務所は最大2320人を収容でき、約1500台の監視カメラや身体検査用スキャナー、携帯電話の通信を遮断する設備を備える。政府は国内で最も近代的かつ安全な刑務所と位置付けている。カスト氏は記者団に対し、「この移送は犯罪者に対して状況は変わったと明確に伝える措置だ」と強調し、犯罪者を追跡し、訴追し、収監すると表明した。

今回の移送は、カスト氏が治安政策で成果を示そうとする取り組みの一環でもある。カスト氏は昨年の大統領選挙戦で、ギャング対策を進めるエルサルバドルのブケレ(Nayib Bukele)大統領をモデルとして掲げ、同国を訪問して治安政策や巨大刑務所を視察した。今回、チリ政府が公開した受刑者の映像も、足かせを付けた受刑者を一列に並べるなど、エルサルバドルの強硬な治安対策を想起させるものとなった。

一方、カスト政権は発足後、治安政策の実行が遅れているとの批判にも直面している。最初の治安相を就任から2カ月余りで更迭し、不法滞在者の迅速な国外退去という公約も進んでいない。政府によると、チリ国内に約30万人いるとされる不法滞在者のうち、これまでに強制送還されたのは約900人。2026年1~7月末の間に7501人が自主的に出国した。

カスト氏は先週、犯罪組織への対策を強化する包括的な治安政策を発表した。危険地域への警察の常駐、ギャング加入に対する罰則強化、組織犯罪に関連する資産差し押さえ、新たな政府機関の設置などを盛り込んでいる。警察による武力行使の規則緩和や、重大な治安上の脅威に対して非常事態を宣言しやすくする憲法改正も提案した。

チリは中南米の中では比較的安全な国だが、誘拐や恐喝、麻薬取引、国際犯罪組織の拡大が国民の不安を高めている。今回の移送は強硬な治安政策を本格化させるカスト政権の姿勢を象徴するものとなった。

この記事が気に入ったら
フォローしよう
最新情報をお届けします
あなたへのおすすめ