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トランプ氏のカナダ関税、法的根拠に疑問、前例なき「第338条」の適用

トランプ政権はカナダが米国産の乳製品や自動車、酒類などに差別的な貿易措置を取っていることへの対抗措置として関税を正当化している。
カナダのカーニー首相(左)とトランプ米大統領(Getty Images)

トランプ(Donald Trump)大米大統領がカナダからの輸入品約200億ドル相当に50%の関税を課したことで、その法的根拠をめぐる議論が浮上している。今回、政権が持ち出したのは1930年関税法の第338条というほとんど使われてこなかった規定であり、これまで実際に発動されたことも、裁判所で合憲性や適用範囲が争われたこともないためだ。

トランプ政権はカナダが米国産の乳製品や自動車、酒類などに差別的な貿易措置を取っていることへの対抗措置として関税を正当化している。第338条は米国製品に対する差別的な扱いを理由として輸入品に高率の関税を課す権限を大統領に認める規定で、1930年代の世界恐慌期に成立した「スムート・ホーリー関税法」に含まれている。

しかし、法律専門家からは、この規定がその後制定された貿易関連法によって実質的に置き換えられている可能性を指摘する声が出ている。1962年通商拡大法や1974年通商法など、後の法律では大統領が関税を発動する際に一定の調査や具体的な根拠を求める仕組みが整備されており、1930年法を現在の貿易政策に適用できるのかが問題となる。

さらに、今回の関税措置では、カナダの特定の貿易慣行によって米国がどの程度の損害を受けたのかが明確に数量化されていないとの批判もある。トランプ氏自身が過去の北米貿易協定でカナダの乳製品に関する割当制度を受け入れていたことから、現在の主張との整合性を疑問視する見方もある。

背景には、トランプ政権が関税政策を推進する一方、最高裁が過去の大規模な関税措置について大統領の権限を制限する判断を示してきた事情がある。そのため政権が別の法律を根拠として新たな関税を発動することは、単なる米加貿易摩擦にとどまらず、大統領と議会の権限分担をめぐる法的問題にも発展する可能性がある。

現時点では、第338条に基づく今回の関税を直接争う訴訟はない。関税対象額が過去の措置より小さく、訴訟を起こす原告を見つけることが難しいことも背景にある。ただし、企業などが訴訟を提起すれば、第338条が現代の米国通商政策で有効なのかという未解決の問題が、初めて司法の場で検証される可能性がある。

今回の関税は米国とカナダの貿易摩擦だけでなく、大統領の関税権限がどこまで認められるのかを問う新たな法廷闘争の火種となっている。

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