◎NATO加盟国が外部から攻撃を受けた場合、米国を含む全31カ国が防衛に当たると条約で定められている。
ドナルド・トランプ前大統領(Getty Images)

2024米大統領選の最有力候補であるトランプ(Donald Trump)前大統領がNATOの防衛費に必要な予算を計上しない加盟国を罵り、集団防衛を放棄すると警告した。

NATOのストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長は11日、トランプ氏の発言を「とんでもない」と非難。バイデン政権も公式声明を出し、火消しに追われた。

トランプ氏は10日に行われた共和党集会で国防費をGDPの2%にするというNATOの努力目標を達成していない加盟国を「役立たず」と罵った。

またトランプ氏は在任時にNATO加盟国の首脳から「ロシアから攻撃を受けた場合、米国は5条(集団防衛)を守るか」と問われた際、「守らない。むしろ、ロシアに攻撃を奨励する」と答えたと明らかにした。

NATO加盟国が外部から攻撃を受けた場合、米国を含む全31カ国が防衛に当たると条約で定められている。

バイデン(Joe Biden)大統領はトランプ氏の発言を「ぞっとする」と糾弾。「前任者はロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領にさらなる戦争と暴力へのゴーサインを出すつもりだ」と断じた。

トランプ氏は演説の中で、「ある大国の指導者がNATOでの財政的義務を果たしていないにもかかわらず、モスクワから攻撃を受けているという仮定の状況を提示した」と振り返った。

「その指導者はそのようなシナリオが現実になった場合、米国は助けに来るのかと尋ねたので、叱責してやった。いいえ、私はあなたを守らない。払ってもらわないと困ると」

大統領選の最有力候補であるトランプ氏はどの国の指導者がいつどこでこのような質問をしたかは明らかにしていない。

2023年の財政支出をまとめたNATOのレポートによると、米国を除く30カ国のうち19カ国の国防費がGDP2%という目標値を下回っている。

しかし、ウクライナ、ロシア、あるいはその同盟国であるベラルーシと国境を接するほとんどの国がこの目標を上回っていた。

ポーランドは米国を上回るGDPの3.9%を国防費に充てている。ルーマニア、ハンガリー、フィンランド、バルト三国のラトビア、リトアニア、エストニアの国防費は2.3~2.7%である。

ストルテンベルグ氏は11日の声明で、「NATOは同盟国を防衛する用意と能力があり、いかなる攻撃にも一致団結した強力な対応で臨む」と強調した。

またストルテンベルグ氏は、「同盟国が互いを守らないという示唆は、NATOの安全保障を大きく損なうものだ」と述べ、「トランプ氏の発言は米国と欧州の兵士を危険にさらす」と非難した。

さらに、「大統領選でどちらが勝とうとも、米国は最も強力で献身的なNATOの同盟国であり続けるだろう」と述べた。

ホワイトハウスの報道官はトランプ氏の発言を一蹴し、「米国はNATO同盟国の安全保障に完全にコミットしている」と強調した。

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