新政権発足迫るイギリス、EUとの首脳会談に備える、関係強化模索
イギリス政府はEUへの再加盟や単一市場、関税同盟への復帰は否定しつつも、現実的な協力関係を積み重ねることで、離脱後に冷え込んだ双方の関係を新たな段階へ進めたい考えだ。
と欧州委員会のフォンデアライエン委員長(Getty-Images/AFP通信).jpg)
イギリス政府は7月1日、欧州連合(EU)との関係修復を進めるため、延期となった首脳会談を今夏以降に改めて開催する方針を示した。イギリスのニック・トーマス=シモンズ(Nick Thomas-Symonds)内閣担当相はブリュッセルで記者団の取材に応じ、「不安定な国際情勢の中でEUとのより緊密な協力は極めて重要だ」と述べ、新政権発足後も関係強化を最優先課題として取り組む考えを明らかにした。
当初、イギリスとEUは7月22日に首脳会談を開催し、通商や安全保障、エネルギー分野での協力拡大を確認する予定だった。しかし、スターマー(Keir Starmer)首相の辞任を受けて会談は延期され、新首相の就任後に改めて日程を調整することになった。与党・労働党のバーナム(Andy Burnham)氏が首相に就任する見通しで、EUとの交渉方針は維持されるとの見方が強い。
トーマス=シモンズ氏は政権交代によって政治日程に遅れは生じたものの、実務レベルでの交渉は着実に進展していると説明した。また現在は農産物・食品の検疫手続きの簡素化、排出量取引制度(ETS)の連携、若者の相互往来を促進するユース・モビリティ制度などについて協議が続いており、「いずれの分野も非常に前向きな状況にある」と強調した。これらが合意に至れば、EU離脱後に複雑化した通関手続きの負担軽減や人的交流の拡大につながると期待されている。
イギリスは防衛産業分野でもEUとの協力を模索している。EUが進めるウクライナ支援融資制度への参加や、防衛調達で域内企業を優遇する「メイド・イン・ヨーロッパ」政策に関し、イギリス企業が不利な立場に置かれないよう協議を続けている。ロシアのウクライナ侵攻や中東情勢の緊迫化など、安全保障環境が大きく変化する中、イギリスはEUとの連携強化を外交・安全保障政策の柱の一つと位置付けている。
一方で、EUとの接近には国内政治上の課題も残る。EU離脱を主導したファラージ(Nigel Farage)議員率いる右派政党「リフォームUK」は、政府の対EU政策を「事実上のブレグジット後退」と批判している。このため政府は、関係改善によって貿易や雇用、経済成長にどのような利益がもたらされるのかを国民に丁寧に説明する必要があるとの認識を示している。イギリス政府はEUへの再加盟や単一市場、関税同盟への復帰は否定しつつも、現実的な協力関係を積み重ねることで、離脱後に冷え込んだ双方の関係を新たな段階へ進めたい考えだ。

