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米国の大豆農家、トランプ関税とイラン戦争で窮地に


関税政策と地政学的リスクは農業経営に大打撃を与えた。
大豆のイメージ(Getty Images)

中西部の大豆農家がトランプ政権の関税政策とイラン戦争という複合的な要因によって深刻な打撃を受けている。

第一に、農家はもともと厳しい経営環境に置かれていたという前提がある。燃料や農機、肥料などの投入コストは長年上昇傾向にあり、さらに世界的な供給過剰によって大豆価格は低迷している。こうした構造的問題により、農家の収益性はすでに圧迫されていた。

第二に、昨年発動した関税政策が状況を悪化させた。トランプ政権による対中関税は報復措置を招き、中国が米国産大豆の購入を大幅に減らしたことで、主要輸出市場が事実上閉ざされた。これにより大豆価格は急落し、特に資金繰りに余裕のない農家は安値での売却を余儀なくされた。結果として収入は大きく減少し、経営の不安定化が進んだ。

第三に、2月末に勃発したイラン戦争が新たな打撃となった。戦闘に伴いホルムズ海峡の輸送が混乱し、石油や肥料の供給が滞ったことで価格が急騰した。肥料は農業生産に不可欠で、その価格上昇は直接的にコスト増につながる。実際、肥料価格は短期間で大幅に上昇し、燃料費も含めた生産コスト全体を押し上げた。

第四に、これらの要因が重なった結果、農家の経営は「挟み撃ち」の状態に陥っている。収入は価格下落で減少する一方、支出はコスト高で増加しており、利益を確保する余地が急速に縮小している。ネブラスカ州の農家はAP通信の取材に対し「追い詰められている」と語り、投入資材の値上がりが最大の悩みだと指摘している。

第五に、こうした状況は農村社会全体に波及している。農家の破産件数は増加傾向にあり、調査では半数近くが前年より経済状況が悪化したと回答している。また、精神的負担の増大や、次世代が農業を継ぐことへの不安も広がっている。農業の持続可能性そのものが問われている状況である。

第六に、国際競争の変化も影響している。ブラジルなど南米諸国が大豆生産で台頭し、中国は輸入先を多様化しているため、米国産大豆の市場シェアは低下している。関税による一時的な市場喪失が長期的な競争力低下につながる懸念も指摘されている。

第七に、政府の支援策にも限界がある。関税の影響を補うための補助金は提供されているものの、農家からは一時しのぎに過ぎず、安定した市場環境の回復にはならないとの声が多い。根本的な解決には貿易関係の安定とコスト構造の改善が必要とされている。

関税政策と地政学的リスクは農業経営に大打撃を与えた。価格低迷とコスト高という二重の圧力の中で、多くの農家が将来への不安を強めており、農業政策と国際情勢が密接に結びついている現実が浮き彫りとなっている。今後、貿易政策や国際紛争の動向が農業の持続性を左右する重要な要因となることは間違いない。

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