◎人権弾劾は「言論の自由」を盾にヘイトスピーチや暴力につながりかねない発言を許すべきではないと警告している。
カリフォルニア州、イーロン・マスク氏(Patrick T Fallon/ロイター通信)

億万長者のイーロン・マスク氏がツイッターを買収する可能性が出てきたことで、「言論の自由」と情報の流れを規制する「ソーシャルメディアの役割」に関する議論が巻き起こっている。

マスク氏はツイッター社が憎悪に満ちた投稿や偽情報に分類される投稿を取り締まっていることに不満を表明していた。ただし、買収後に差別、暴力、殺人、戦争関連の誤った情報の取り締まりが緩むかどうかは不明である。

ツイッター社の取締役会は25日、440億ドル(約5兆6000億円)でマスク氏に身売りすることに合意したが、同社は声明の中で、「この取引にはまだ株主の承認が必要」と説明している。

米国の保守派の多くは、好きな情報を好きなだけ発信できる穏やかなツイッターの到来を歓迎し、下院共和党員はマスク氏に、2021年1月6日の連邦議会襲撃事件後に凍結されたドナルド・トランプ前大統領のアカウントを速やかに復元するよう促している。

しかし、主要な人権団体はゆるゆるのツイッターでヘイトスピーチ、処刑動画、フェイクニュースなどが拡散される可能性があることに懸念を表明し、マスク氏が言論の自由を最優先する可能性に落胆している。

全米有色人地位向上協会(NAACP)は声明で、「マスクさん、言論の自由は素晴らしい、ヘイトスピーチは容認できない。偽情報、誤報、ヘイトスピーチに居場所はありません」と述べている。

またNAACPは、トランプ氏のアカウントを復元したり、ツイッターがフェイクニュースやデマを流すツールにならないよう警告した。「マスクさん、民主主義を守ることは何よりも重要です。人命が危険にさらされています。米国の民主主義も同様です」

しかし、共和党の有力者で2024年の大統領候補と目されるフロリダ州のデサンティス州知事は、言論の自由を保障するというマスク氏を称賛し、「ツイッターは物語を強制するツールではなく、自由に発言できる、合衆国憲法が保障している言論の自由を保障するツールになるべきであり、マスク氏の買収はその見通しを示している」と喜びを表明した。

マスク氏も取締役会が買収を承認した後、声明であらためて「言論の自由」を唱えた。「言論の自由は民主主義が機能するための基盤であり...」

「私は新しい機能でツイッターを強化し、アルゴリズムをオープンソースにして信頼を高め、スパムボットを倒し、すべての人間を認証することによって、ツイッターをこれまで以上に良くしたいと思っています。ツイッターはとてつもない可能性を秘めています。私は会社やユーザーと協力して、それを解き放つことを楽しみにしています」

トランプ氏の盟友である共和党のジョーダン下院議員もマスク氏を称賛した。「言論の自由が帰ってきました」

しかし、トランプ氏はツイッターに凍結を解除されたとしても、戻らないと示唆している。

トランプ氏はフォックスニュースの電話インタビューの中で、「私はツイッターに戻るつもりはない。私はTRUTH Socialにとどまるつもりだ」と述べ、2月に公開された新しいSNSプラットフォームに言及した。「イーロンはツイッターを改良してくれるだろう。彼はいい男だから買収してほしい」

一方、ホワイトハウスはSNSの力に懸念を表明した。

ジェン・サキ報道官は25日の会見で、「バイデン大統領はSNSの力に懸念を示してきた」と述べる一方、進行中の買収手続きやその後に発生しうる問題にはコメントしないとした。「バイデン大統領は透明性を高めるための立法措置などを通じて、ハイテク・プラットフォームは、自らが引き起こす被害に対して責任を負わなければならないと、長い間主張してきました」

人権NGOアムネスティ・インターナショナルUSAの人権担当ディレクターであるクラインマン氏も「言論の自由」を盾にヘイトスピーチや暴力につながりかねない発言を許すべきではないと警告している。「ツイッター社には人権を守る責任があり、その責任はすでに果たされていません」

クラインマン氏は「ツイッターがヘイトスピーチや差別を擁護するSNSになることを懸念している」と強調した。「最も恐ろしいことは、ユーザーに対するヘイトスピーチや暴力を煽る発言に故意に目をつぶることです」

一方、進歩的な民主党員はマスク氏の富に目を向け、富裕層への課税を強化するよう呼びかけた。

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