◎アメリカの債務残高は10月18日までに借り入れ可能な上限(28.4兆ドル)に達する予定だったが、上限が引き上げられることで債務不履行はひとまず回避された。
2021年10月7日/ワシントンD.C.議会議事堂、共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首(Getty Images/AFP通信/PAメディア)

10月7日、米議会上院は世界的な景気後退を誘発しかねないチキンゲームから撤退し、債務借入の上限引き上げ法案を可決した。

アメリカの債務残高は10月18日までに借り入れ可能な上限(28.4兆ドル)に達する予定だったが、上限が引き上げられることで債務不履行はひとまず回避された。

アメリカが債務不履行に陥る可能性はほぼゼロに等しいが、上限到達はコロナ禍で厳しい状況にある国の経済にダメージを与え、景気後退と金利の引き上げを誘発し、失業者を含む連邦政府の支援に依存している数千万人への支払いに影響をもたらす可能性があると懸念されている。

金融市場は民主党と共和党の進行中の闘争に振り回された。

上院は債務の上限を12月3日まで一時的に約4,800億ドル引き上げる法案に対する議事妨害(フィリバスター)を賛成61ー反対38で終了させた。民主党は共和党の議事妨害を回避するために共和党員10人の支持を得る必要があったが、11人が賛成に投票した。

その後、法案は賛成50ー反対48で可決された。共和党員は1人も賛成に投票しなかった。

これにより、法案は民主党が過半数を占める下院に送られた。

米主要メディアによると、民主党のナンシー・ペロシ下院議長は7日の声明で、下院は休会を早めに切り上げると示唆したという。下院は10月19日に再開すると予想されていたが、来週中に投票を行う可能性が高いと伝えられている。

民主党のチャック・シューマ―上院院内総務は投票に先立ち、記者団に「両党は合意に達した」と発表した。

一方、共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首は夜通し続いた交渉を「誠実な協議」と呼んだが、予算法案をめぐる問題は解決していないと示唆した。

ジョー・バイデン大統領は約1兆ドル(約110兆円)のインフラ法案と下院民主党が提案した約3.5兆ドル(約390兆円)のヒューマンインフラ法案で経済を立て直したいと主張しているが、共和党と一部の右寄りな民主党員は予算規模に強い懸念を表明している。

債務残高が借り入れの上限に達すると、社会保障を含む各種支払いの遅延、退役軍人に対する給付の停止、クレジットカード、自動車ローン、住宅ローンの金利上昇などを誘発する恐れがある。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官は7日の記者会見でマコーネル上院少数党首の決定を歓迎した。

<国の総債務残高(対GDP比)ランキング:2021年4月時点>
1位 ベネズエラ 304.13%
2位 スーダン 262.52%
3位 日本 256.22%
4位 ギリシャ 213.10%
5位 エリトリア 184.70%
17位 アメリカ 127.11%

債券による借入は財務省を通じて行われる。米国国債は世界で最も安全かつ信頼性の高い投資の1つと見なされているが、米議会は1939年に債務の借り入れに上限を設定し、厳しく管理することにした。専門家によると、上限の停止または引き上げはこれまでに100回以上行われたという。トランプ政権は3度上限を引き上げている。

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