航空マイル、以前ほど役に立たなくなる可能性も、燃料高騰続く
航空会社にとって燃料費は人件費に次ぐ大きなコスト項目である。
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中東情勢の緊迫化が世界の航空業界と旅行者に大きな影響を与えている。イランを巡る軍事衝突の長期化によって原油価格とジェット燃料価格が急騰し、夏の航空運賃が上昇しているためだ。その結果、航空会社のマイレージやクレジットカードのポイントの価値も実質的に低下しつつある。AP通信によると、旅行シーズンを前に「航空マイルが以前ほど役に立たなくなる可能性がある」という。
背景にあるのは、中東地域における原油供給の混乱だ。特にホルムズ海峡を巡る緊張は世界のエネルギー市場を直撃している。ホルムズ海峡は世界の石油輸送の2割を担う要衝であり、物流停滞や攻撃リスクの高まりによって原油価格が急騰した。これに伴いジェット燃料価格も上昇し、米国では戦争開始前の1ガロン当たり約2.5ドルから、一時4ドル近くまで上昇した。
航空会社にとって燃料費は人件費に次ぐ大きなコスト項目である。燃料費は運航コスト全体の2〜3割を占めるため、価格上昇は経営に直接打撃を与える。欧州の格安航空会社イージージェットは燃料費高騰による収益悪化を警告し、夏季予約の伸び悩みも明らかにした。燃料価格は戦争開始後に80%以上上昇し、航空各社は対応を迫られている。
こうしたコスト増は最終的に航空券価格へ転嫁される。米消費者物価指数では4月の航空運賃が前年同月比で20%以上上昇した。特に長距離国際線は燃料消費量が大きく、価格上昇の影響を受けやすい。すでにアジアや欧州の一部航空会社では燃油サーチャージの引き上げが始まっており、今後さらに広がる可能性がある。
問題はこうした値上がりが航空マイルの価値低下にもつながっている点だ。近年、多くの航空会社は「ダイナミックプライシング」を導入し、必要マイル数が需要や運賃に応じて変動する仕組みになっている。そのため航空券価格が高騰すると、特典航空券の必要マイル数も増加する。以前なら数万マイルで交換できた路線でも、現在はさらに多くのポイントが必要になるケースが増えている。
さらに、座席数そのものが限られていることも旅行者には逆風だ。航空会社は燃料費抑制のため、一部路線の減便や運航見直しを進めている。中東上空を避ける迂回ルートの増加も飛行時間と燃料消費を押し上げている。これにより、旅行者は「高い航空券」と「取りにくい特典航空券」の二重苦に直面している。
一方で、需要自体は依然として底堅い。調査会社UBSのアンケートでは、多くの米国人が「運賃が高くても旅行を続ける」と回答した。コロナ禍後の旅行需要回復が続いているためで、航空会社側も強気の価格設定を維持している。特に富裕層向けのプレミアム座席需要は堅調で、各社は高付加価値サービスへの注力を強めている。
専門家は旅行者に対して柔軟なポイント利用を勧めている。特定航空会社に依存するより、複数社で使えるクレジットカード系ポイントの方が有利な場合もあるという。また、早めの予約やオフピーク時期の利用によって必要マイル数を抑えられる可能性もある。ただし、高額な年会費や金利負担を考慮せずにポイント獲得を優先すると、かえって損失につながる恐れもある。
中東情勢の先行きは依然不透明であり、燃料価格の高止まりが長期化する可能性も指摘されている。航空運賃の上昇は単なる一時的現象ではなく、世界経済と地政学リスクが旅行コストに直結する時代を象徴している。旅行者にとって、マイルやポイントだけでは以前のように「お得な空の旅」を実現しにくい状況が続きそうだ。
