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地方選大敗のスターマー英首相、EUとの関係強化で辞任求める声に反撃

スターマー氏は12日に予定される演説で、EUとの関係強化を政権再建の中心に据える方針を打ち出す。
2026年5月10日/イギリス、ロンドンの首相府、スターマー首相の記者会見(ロイター通信)

イギリスのスターマー(Keir Starmer)首相が苦境に立つ政権の立て直しに向けて大きな政治的賭けに出た。スターマー氏は12日に予定される演説で、EUとの関係強化を政権再建の中心に据える方針を打ち出す。2020年のEU離脱(ブレグジット)以降、英国政治を分断してきた問題に再び踏み込む形となり、その成否が政権の命運を左右する可能性がある。

背景には、与党・労働党への支持急落がある。先週行われたイングランド地方選では、労働党が30年以上ぶりとなる歴史的大敗を喫した。反移民・反EUを掲げる新興右派政党「リフォームUK」が勢力を拡大し、労働党支持層を切り崩している。これを受け、党内ではスターマー氏の責任を問う声が噴出し、30人以上の労働党議員が辞任を求める異例の事態となった。

こうした中、スターマー氏は「イギリスを再び欧州の中心に位置付ける」と訴え、EUとの関係改善を経済再建の柱に据える考えだ。英国経済はブレグジット後、輸出手続きの複雑化や投資停滞に直面しており、企業界からはEUとの貿易障壁緩和を求める声が強まっている。政府は防衛、安全保障、エネルギー政策などでEUとの協力拡大を模索してきた。

ただし、スターマー氏はEU再加盟には踏み込まない姿勢を維持している。自由な人の往来やEU単一市場への復帰にも否定的で、「ブレグジットをやり直すつもりはない」と繰り返してきた。今回の方針転換も、あくまで「実務的な関係改善」にとどめる構えだ。だが、親EU派からは「中途半端だ」との批判、離脱支持派からは「事実上のEU回帰だ」と反発が出ている。

スターマー政権は2024総選挙で圧勝し、長期安定政権への期待もあった。しかし、物価高や住宅問題、移民政策への不満が高まる中、支持率が急落している。特に冬季燃料補助の削減や増税策は有権者の反発を招き、「変化を約束したのに生活は改善していない」との失望感が広がっている。

さらに党内では、レイナー(Angela Rayner)前副首相やストリーティング(Wes Streeting)保健相ら有力政治家の動向にも注目が集まっている。現時点で有力な挑戦者は現れていないが、地方選惨敗を機に「ポスト・スターマー」を意識した動きが活発化しているとの見方もある。元閣僚のキャサリン・ウェスト(Catherine West)議員はスターマー氏が進退を明確にしなければ党首選実施を求める可能性を示唆した。

スターマー氏自身は現政権について、「10年計画」と述べ、次の総選挙も自ら率いる考えを強調している。しかし、EUとの関係改善は英国政治において極めて敏感なテーマであり、政権浮揚につながる保証はない。ブレグジット後のイギリスの立ち位置をどう再定義するのか。スターマー氏の「政治的反撃」は英国政治の転換点となる可能性がある。

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