2020年10月23日 ロイター通信/アゼルバイジャン、ギャンジャ市、アゼルバイジャン軍の兵士

停戦合意は数分で破綻

ナゴルノ・カラバフをめぐるアルメニアとアゼルバイジャンの紛争は、アメリカの仲介を受け10月25日に3度目の停戦合意に至った。

しかし、合意から数分後に砲撃が始まり、両国は合意に違反したとしてお互いを非難、戦闘は激化した。

停戦の試みはこの3週間で3度目、フランスとロシアの仲介に続き、アメリカの努力もあっさり破綻した。

ABCニュースによると、先月末から始まったアゼルバイジャン軍によるナゴルノ・カラバフ奪還作戦開始以来、数千人が死亡し、数万人の民間人が避難を余儀なくされたという。なお、ロシアのプーチン大統領は先週時点で両軍兵士と民間人の犠牲者は約5,000人と述べている。

紛争仲介にあたる欧州安全保障協力機構(OSCE)ミンスク・グループを率いるアメリカ、ロシア、フランスは何度も交渉を試みたが、いずれも失敗に終わっている。

先週、アメリカのマイク・ポンペオ国務長官はワシントンD.C.で両国の外相と会談し、3度目の停戦合意に至った。

2020年10月21日 AP通信/ナゴルノ・カラバフ、銃を構えるアルメニア軍の兵士

26日午後、アルメニアのニコル・パシニャン首相は「アメリカと国際社会の仲介による停戦の努力は失敗した」とアゼルバイジャンを非難した。

伝えられるところによると、27日も激しい戦闘が続き、アルメニアの国防省はアゼルバイジャン軍がナゴルノ・カラバフ近郊の国境部隊に発砲してきたと声明を発表した。

これに対しアゼルバイジャンは、アルメニアの砲撃で数人の民間人が犠牲になったと主張している。

米国防省によると、ポンペオ国務長官は27日にパシニャン首相とアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領に電話をかけ、停戦を監視するよう促したという。

トランプ大統領は26日にペンシルベニア州で記者団の取材に応じ、停戦は「保留中」とコメントした。

アルメニアのパシニャン首相は26日午後の声明の中で、停戦の失敗がアメリカの選挙で問題になりつつあると語っている。

ニコル・パシニャン首相:
トランプ大統領は選挙運動を有利に進めたいと考え、早期の停戦合意を望んでいる

アルメニアはアゼルバイジャン軍が25日夜にクバドル(ナゴルノ・カラバフ)の町を占領し、国境近くのシュニク地方(アルメニア)の郊外に接近したため、戦闘が始まったと主張した。

2020年10月21日 AP通信/ナゴルノ・カラバフ、戦況を注視するアルメニア軍の兵士

アリエフ大統領は一連の戦闘について、「アゼルバイジャンの領土を占領するアルメニアに平和計画を履行させる戦い」と述べ、「ナゴルノ・カラバフの支配権を完全に取り戻す」と約束している。

アリエフ大統領は月曜日にツイッターを更新、「私たちは正しい道を進んでいる」とツイートした。

27日、アルメニアおよびアゼルバイジャンと緊密な関係を構築しているロシアは、戦いに大きな影響を与えるトルコに対し、影響力を行使して戦闘を停止させるよう促した。

ナゴルノ・カラバフについて知っておくべきこと

2020年10月25日、アメリカの仲介でアルメニアとアゼルバイジャンが停戦に合意

ロシアのプーチン大統領によると、9月末からの戦闘で少なくとも5,000人が死亡。.

2020年10月17日。10月9日の停戦合意は破綻し、民間人13人が死亡、40人以上が負傷した。

・約4,400平方キロメートルの山岳地帯。

・キリスト教のアルメニア人とイスラム教徒のトルコ人が生活していた。

・ソビエト連邦時代、ナゴルノ・カラバフはアゼルバイジャンの自治区に加えられた。

公式にはアゼルバイジャンの領土と認められているが、人口の大部分はアルメニア人で構成されている

・現在、ナゴルノ・カラバフは分離主義勢力(自称当局)に占領されている。

自称当局は、アルメニアを含む全ての国連加盟国に認められていない

・1988年から1994年の紛争で約3万人が死亡、推定100万人が避難を余儀なくされた。

・1994年の停戦合意後も膠着状態は続いていた。

・アルメニアは分離主義勢力(自称当局)を認めていない。

・アゼルバイジャンは「分離主義勢力=アルメニア軍」と認識している。

・トルコはアゼルバイジャンを積極的に支援している。

・ロシアはアルメニアに軍事基地を持っている。

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