◎次回の総選挙は2023年6月までに行われる予定。ドラギ政権が解散すれば、今秋に前倒しされる可能性がある。
2022年7月13日/イタリア、首都ローマの国会前、ドラギ首相(pool/EPA通信)

イタリアのドラギ(Mario Draghi)首相は14日、前首相率いる連立パートナーの信頼を失ったとして辞意を表明し、大統領に辞表を提出した。

ドラギ氏はコンテ(Giuseppe Conte)前首相の左派政党「五つ星運動(M5S)」の支持を受け、2021年2月に首相に就任した。

スーパーマリオの愛称で親しまれているドラギ氏は声明で、「政府はパートナーの信頼を失った」と述べた。

しかし、マッタレッラ(Sergio Mattarella)大統領はドラギ氏の辞任を却下し、もっと頑張るよう命じた。

マッタレッラ氏はドラギ氏にコロナ危機などがもたらした経済危機からの復興を命じ、国をまとめ上げるよう求めたと伝えられている。

マッタレッラ氏の辞任拒否が政治危機の解決につながるかどうかは不明である。

五つ星運動はドラギ政権が提出したインフレ対策法案の採決への参加を拒否している。野党は法案に反対しているため、五つ星運動が採決に参加しなければ、否決される可能性が高い。

地元メディアによると、ドラギ氏は来週20日に議会演説を行い、政権運営に必要な過半数の支持を得られるかどうかを見極めるという。

コンテ氏は政権が提出した230億ユーロのインフレ対策法案の見直しを求めている。

14日に行われた元老院(上院)採決は賛成多数で可決されたが、ドラギ氏は五つ星運動の支持なしで政権を維持することは不可能と繰り返し警告した。

次回の総選挙は2023年6月までに行われる予定。ドラギ政権が解散すれば、今秋に前倒しされる可能性がある。

一部の野党議員は早期解散を求めているものの、多くの専門家が選挙よりエネルギー危機やインフレに対処すべきと懸念を表明している。

このまま政治危機が長引けば、ロシアのウクライナ侵攻がもたらした燃料価格高騰やインフレへの対応、来年度の予算編成作業にも影響が出る可能性がある。

元イタリア首相であるジェンティローニ(Paolo Gentiloni)EU経済委員は14日、「EU執行部はイタリアの動向を驚きを持って注視している」と懸念を表明した。

イタリアの産業連盟コンフィンドゥストリア(Confindustria)も懸念を表明し、五つ星運動の決定を「無責任」と非難した。

五つ星運動はドラギ政権最大の政党だったが、相次ぐ離党と支持率の低下で危機に直面している。

同党のディマイオ(Luigi Di Maio)前党首もコンテ氏を厳しく批判した。「コンテ党首はイタリアを経済的・社会的崩壊に引きずり込み、ドラギ政権を崩壊させたうえで自党の支持率回復を狙っているのでしょう...」

あらゆる政党が総選挙を視野に入れており、特に右派政党はドラギ氏に今すぐ解散するよう促している。

極右連盟を率いるサルヴィーニ(Matteo Salvini)議員と極右政党「イタリアの同胞」のメローニ(Giorgia Meloni)議員は早期解散を歓迎した。

メローニ氏は14日、記者団に対し、「政権を取るつもりでいる」と述べ、サルヴィーニ氏は「麻痺を解消せよ」と主張した。

一方、中道・左派政党は解散に懸念を示し、今はドラギ政権を再構築する必要があるとした。

2022年7月13日/イタリア、首都ローマの国会前、コンテ前首相(pool/EPA通信)
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