◎2021年の6月までにイエメンの総人口の約50%(1,600万人)が「深刻なレベルの食糧不安」に直面すると予想されている。
◎世界食糧計画(WFP)のデイビッド・ビーズリー 事務局長は先週の国連安全保障理事会で、「イエメンの市民は食べ物どころか水すらまともに飲むことができない」と窮状を訴えた。
ABCニュース/イエメン、栄養失調に苦しむ幼児を抱く母親

世界食糧計画(WFP)によると、2020年末時点でイエメンの幼児、約200万人が重度の栄養失調状態にあり、そのうち36万人が死亡する可能性があるという。

2015年に始まった内戦は世界最悪の人道的危機を引き起こしている。

国連および人道支援団体は、援助を必要とする約2,400万人(総人口の約80%)に物資と医療を提供し続けてきた。

現在、長引く内戦に新たなリスクが加わり、国内の情勢はより一層悪化すると伝えられている。

米ドナルド・トランプ前大統領は、退任直前にシーア派反政府武装組織フーシの「アンサー・アッラー」を外国のテロ組織に指定した。

援助機関とアメリカのある上位議員はアンサー・アッラーのテロ組織指定を「数百万人に対する死刑宣告」と呼んだ。

イエメンの紛争は2015年に本格化し、敵対する政府とフーシはともに戦争犯罪を犯した疑いがあると考えられている。

イエメン政府を支援するサウジアラビアは国際的な批判を受けているにもかからず、病院や民間施設を狙う武器を繰り返し提供し、アメリカとイギリスは王国に兵器を輸出し続けている。

アンサー・アッラーを含むフーシ民兵グループは国土の大半を支配しているが、政府はイエメン第二の都市アデンに拠点を置き、国際社会に認められている。

2020年末にアデン国際空港で発生したテロ攻撃は政府の閣僚を乗せた飛行機を狙ったものと考えられており、25人が死亡、110人が負傷した。なお、フーシは犯行声明を出しておらず、攻撃には関与していないと主張している。

ABCニュース/イエメン

WFPによると、2021年の6月までにイエメンの総人口の約50%(1,600万人)が「深刻なレベルの食糧不安」に直面すると予想されており、最低レベルの食糧援助を提供するためには少なくとも19億ドル(約2,000億円)が必要だという。

国連や他の人道支援団体は、2018年の飢饉を超える壊滅的な状態に陥る可能性があると警告している。

WFPのデイビッド・ビーズリー 事務局長は先週の国連安全保障理事会で、「イエメンの市民は食べ物どころか水すらまともに飲むことができない」と窮状を訴えた。

デイビッド・ビーズリー 事務局長:
「彼らの手元には何もありません。イエメンを放置すれば大惨事になるでしょう...私たちはこれまで経験したことのない大惨事を目の当たりにするでしょう」

先月、ユニセフのヘンリエッタ・フォア事務局長は声明で、「イエメンの子供たちは地球上で最も危険な場所にいる」と警告した。

ヘンリエッタ・フォア事務局長:
「200万人が学校に通っていません。2015年以来、数千人の子供が傷つけられ、切られ、撃たれました。ジハード軍の兵士になった児童もたくさんいます

WFPによると、2020年末の時点で少なくとも100万人の妊婦または授乳中の女性が治療を必要としているという。

ハッジャ県のバニハッサン病院のアリ・ハジャー医師はABCニュースの取材に対し、「数カ月前に援助が途絶えたため、食糧の在庫は数カ月前に尽きた」と語った。

アリ・ハジャー医師:
「内戦は、経済、健康、生活など、すべてを破壊しました。援助は非常に重要です。人道援助がなければイエメンの市民、妊婦、そして子供たちは巨大な大惨事に巻き込まれるでしょう」

1月12日、米マイク・ポンペオ前国務長官は、武装組織フーシのアンサー・アッラーを外国テロ組織(FTO)に指定したと発表した。

ポンペオ前国務長官は声明の中で、「指定は平和で統一されたイエメンを構築するための努力をサポートするだろう」と述べた。

FTOに指定されたアンサー・アッラーに支援(物資、データなど)を提供することは違法である。つまり、公式の免除がなければ、アンサー・アッラーの支配下に置かれている市民に食糧を提供することはできない

国際救助委員会のアマンダ・カンタンツァーノ氏はABCニュースの取材に対し、「FTOの指定に憤慨している」と怒りをあらわにした。

アマンダ・カンタンツァーノ氏:
「FTOは効果的な支援を不可能にする障壁だと考えています。フーシの支配下にいる市民に食べ物を届けることは困難になりました」

イエメンの国連特別特使を務めるマーティン・グリフィス氏はFTOの指定について、「対話による紛争の解決を妨げる可能性がある」と警告した。

一方、バイデン政権の国務長官に任命されたアントニー・ブリンケン氏は、「FTOの指定を直ちに検討する」と述べた。ただし、専門家によると、解除にはかなり複雑な法的手続きと時間を要する可能性があるという。

戦略国際問題研究所、中東プログラムのジョン・アルターナム氏はABCニュースの取材に対し、「解除までの期間が重要になる。イエメンの市民は今も苦しみ続けている」と述べた。

ジョン・アルターナム氏:
「何百万人ものイエメン人が死刑判決を受けました。彼らは今後数週間の間に食糧を使い果たし、飢えて死ぬでしょう。食べ物がなければ、彼らは生きられません。トランプ政権は退任間際に指定を実行しました。彼らはこうなると分かっていたのでしょう

「フーシと政府が和解しなければ、市民は餓死します」

ABCニュース/イエメン、栄養失調に苦しむ幼児

イエメン内戦について

(2015年)
・1月22日:フーシのクーデターでハーディー暫定大統領とバハーハ首相が辞任。

・2月6日:フーシが議会を強制解散させ、暫定統治機構「大統領評議会」を開設した。

・2月21日:ハーディー暫定大統領が辞意を撤回、フーシ派との対立激化。

・3月25日:フーシ派がハーディー暫定大統領の拠点を襲撃。ハーディー暫定大統領はボートで脱出した。

・3月26日:サウジアラビア連合軍、空爆を開始。

・7月17日:ハーディー政権、フーシ派から第2の都市アデンを奪還したと宣言。

・8月4日:ハーディー政権、フーシ派からアルアナド空軍基地を奪還したと宣言。

・8月11日:ハーディー政権、アビヤン州を制圧。

・8月15日:ハーディー政権、5つ目の州を奪還。サウジアラビア連合軍の支援と空爆で攻勢に出る。

・8月19日:人道支援団体アムネスティ・インターナショナルは、首都サナア、アデン、タイズへの攻撃中に、サウジアラビアが戦争犯罪を行なっていると指摘、非難した。

・8月24日:世界食糧計画(WFP)、600万人が深刻な食糧難に陥り、緊急支援を必要としていると警告。

・9月22日:ハーディー暫定大統領が、半年ぶりにイエメンに帰還。

・10月15日:フーシがサウジアラビアの空軍基地に弾道ミサイルを発射。

(2016年)
・4月3日:ハーディー暫定大統領がバハーハ副大統領兼首相を解任。

・9月9日:米軍とイエメン軍、国際テロ組織アラビア半島のアルカイダ(AQAP)に捕らわれていた人質の救出作戦を実行。人質3人は抗戦中に死亡した。

・10月4日:フーシ派がハーディー政権に対抗する「救国政府」樹立を宣言。

(2017年)
・5月:フーシ、国内のコレラ感染が急速に悪化したことを受け、非常事態を宣言。

・6月5日、イエメンとカタールが国交断絶。カタール政府がフーシを支援していたため。

・11月4日:フーシがサウジアラビアの首都リヤドをに弾道ミサイルを発射。

・11月6日:サウジアラビアがイランの支援を防ぐ名目でイエメンの国境を封鎖。

・12月4日:フーシがサーレハ前大統領の乗った車を襲撃、殺害したと発表。

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