サウジアラビアと米国が原子力協定に署名、核兵器への転用につながる可能性も
両国が長年交渉を続けてきた原子力協力が大きく前進した一方、核兵器への転用につながる可能性があるとして、米連邦議会や核不拡散の専門家から懸念の声が上がっている。
とサウジアラビアのサルマン皇太子(AP通信).jpg)
米国とサウジアラビアは22日、民生原子力分野での協力に関する新たな協定に署名した。協定は米国の原子力技術を活用した原子力発電所の建設を可能にするもので、サウジ国内でのウラン濃縮や使用済み核燃料の再処理に道を開く内容を含む。
両国が長年交渉を続けてきた原子力協力が大きく前進した一方、核兵器への転用につながる可能性があるとして、米連邦議会や核不拡散の専門家から懸念の声が上がっている。
協定には米エネルギー省のライト(Chris Wright)長官とサウジのエネルギー相が署名した。期間は30年間に及び、米国企業がサウジの原子力発電所建設や関連インフラ整備で中心的な役割を担う見通しだ。サウジは経済改革計画「ビジョン2030」の一環として電源構成の多様化を進めており、国内の電力需要を原子力で賄うことで石油輸出を拡大し、脱炭素化も進めたい考えである。米側にとっても、巨額の事業機会を確保するとともに、中国やロシアが中東の原子力市場で影響力を拡大することを防ぐ狙いがある。
一方で、今回の協定は従来の米国の原子力協力協定と比べて規制が緩和されている点が大きな論点となっている。アラブ首長国連邦(UAE)との2009年の協定では、相手国によるウラン濃縮や再処理を認めない「ゴールドスタンダード」が採用されたが、サウジとの協定にはこうした規定が盛り込まれなかった。また、国際原子力機関(IAEA)の追加議定書への参加も義務付けられておらず、従来より厳格な国際査察の枠組みが欠けているとの指摘が出ている。
サウジは核拡散防止条約(NPT)の加盟国であり、核兵器を保有しない義務を負っている。しかし、サルマン皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)は過去に、イランが核兵器を保有すればサウジも対抗措置を取る考えを示したことがある。地域の安全保障環境を踏まえると、ウラン濃縮能力の保有が将来的な核開発につながるとの警戒感は根強い。特に米国が今年、イランの核開発を理由の一つとして軍事作戦を展開した直後だけに、中東で核開発競争を助長しかねないとの見方も広がっている。
協定は今後、米議会に送付され、90日間の審査を受ける。議会が反対決議を採択しても、大統領の拒否権を覆すには上下両院で3分の2以上の賛成が必要で、成立の可能性が高いとみられている。ただ、民主党議員を中心に「核不拡散政策の後退につながる」との批判は強く、議会審議では安全保障上のリスクや監視体制の妥当性が大きな争点となる見通しだ。
今回の協定は米サウジ関係を一段と強化する象徴的な合意である一方、中東の戦略環境や国際的な核不拡散体制に長期的な影響を及ぼす可能性がある。
