◎ロシアの外交官はタリバンの戦闘員を「普通の男」と呼び、カブールは以前より安全になったと主張した。
2021年8月20日/ロシア、首都モスクワのクレムリン、ウラジーミル・プーチン大統領(Sputnik/クレムリン/Pool/AP通信)

アフガニスタン政府の崩壊に困惑したアメリカを含む西側諸国は首都カブールから自国民を脱出させるためにスクランブルをかけたが、ロシアはタリバンの乗っ取りを穏やかな眼差しで見つめ、首都カブールのロシア大使館はいつもと変わらぬ様子だったと伝えられている。

ロシアの外交官はタリバンの戦闘員を「普通の男」と呼び、カブールは以前より安全になったと主張した。ウラジーミル・プーチン大統領は20日、「今回の占領は西側諸国がタリバンに協力しなかった結果」と述べた。

1950年代、アフガニスタンのモハンマド・ダウド将軍は経済および軍事的支援を受ける目的でソビエト連邦に接近し、パルダ(女性を公の場から隔離する慣行)を廃止したうえで、社会改革を実行した。

それから30年後、アフガニスタン人民民主党(PDPA)は軍事クーデターで大統領一家を暗殺し、アフガニスタン民主共和国(DRA)の創設を宣言したが、紆余曲折の末、ヌール・モハマド・タラキ書記長は暗殺され、ソビエトはこれに激怒し、ソビエト・アフガニスタン戦争が勃発した。

ロシアの大使館は他国とは異なり、タリバンとの穏やかな関係を維持している。ドミトリー・ジルノフ大使は占領から2日後にタリバンの代表と会談し、「報復や暴力の兆候は見られなかった」と述べた。

クレムリンの国連代表ワシーリー・ネベンジア氏も「町に法と秩序が戻り、戦争は終結し、国民は和解に向けた第一歩を踏み出した」と語った。

アフガン特使であるザミール・カブロフ氏も、「アシュラフ・ガニー大統領の古い傀儡政権よりタリバンとの交渉のほうが容易」と穏やかに語った。

ロシア大使館はAP通信に、ガニー大統領は大金を持って逃亡したと主張したが、ガニー大統領はこの主張を却下している。

ロシアの国営タス通信社は今週、アフガニスタンに関する報道の中でタリバンを「テロリスト」とは呼ばず、「過激派」と呼ぶようになった。

ロシアは2003年以来、タリバンをテロ組織に指定しているが、2018年から何度もタリバンの代表をモスクワに招き、会談している。アフガニスタン政府は当時、「ロシアはタリバンの公然たる支持者であり、モスクワ会談から公式政府を除外した」と非難していた。

一方、アメリカはロシアの動きを見逃さず、トランプ政権のレックス・ティラーソン国務長官は2017年8月、ロシアはタリバンに武器を提供していると非難した。しかし、ロシア外務省はこの主張を却下している。

ソビエト・アフガニスタン戦争/ソビエト軍の兵士(Getty Images/AFP通信)
ソビエト・アフガニスタン戦争/ムジャーヒディーン(イスラムジハード軍)の戦闘員(Getty Images/AFP通信)

ロシアがタリバン政権を政府として認めるかどうかは不明である。プーチン大統領は、「タリバンが秩序を回復するという約束を果たすことを望んでいる」と述べた。

ロシアは中央アジアの同盟国であるアフガニスタンの安定と国境の安全、テロやヘロインの密売の蔓延を防ぐことに焦点を当てている。

9.11の直後、ロシアはアメリカが旧ソビエト諸国に軍事基地を建設したことを歓迎したが、関係はすぐに悪化した。

ロシア外務省は先月、「タリバンは地域の安定を確立するために、イスラム国(ISIS)を含む過激派組織と戦い続けると約束した」と述べていた。しかし、タリバンはアフガン占領後、刑務所からISISやその他のジハード軍の戦闘員を解放している。

ロシアはアフガンに軍隊を派遣することに関心がないと主張している。理由は、1979年から1989年まで続いたソビエト・アフガニスタン戦争で屈辱的な撤退を余儀なくされたためである。

ソビエトはアフガン赤軍内で発生した裏切りとタラキ書記長の暗殺(クーデター)に激怒し、バルチャム派の戦闘員を首都カブールに送り込み、クーデター政権を返り討ちにし、バルチャム派を支援するためにアフガニスタンに侵攻した。

アフガン侵攻は崩壊しつつあったソビエト経済の大きな負担になり、1980年のモスクワ五輪はボイコット大会になった。

ソビエトはバブラク・カールマル率いるバルチャム派を首都カブールに据えた。これに対し、アメリカ、パキスタン、中国、イラン、サウジアラビアはバルチャム派と敵対するムジャーヒディーン(イスラムジハード軍)に資金と武器を提供した。

ソビエト軍は1988年の和平協定に署名し、屈辱的な撤退作戦は1989年2月に完了した。ソビエト軍の死亡者は15,000人に達し、国民は他国の争いに介入した政府に幻滅し、ソビエトの崩壊を早めるきっかけになったと広く信じられている。

ロシア政府はタリバン政権の動きを静観しているが、モスクワの専門家はアフガニスタンの混乱に危機感を募らせている。

ロシア国際問題評議会のシンクタンクの責任者であるアンドレイ・コルツノフ氏は、「タリバンは国全体、特に北部を支配するのに苦労し、戦闘の混乱はロシアと近隣諸国に波及する可能性があると信じている」と述べた。「アフガニスタンに拠点を置くアルカイダやISIS関連組織の戦闘員は中央アジアに混乱をもたらすでしょう。タリバンを含むジハード軍は恐らく、末端戦闘員をコントロールできません」

アフガニスタンの北部には、2001年10月のアフガン侵攻で米軍と協力し当時のタリバン政権を打倒した北部同盟の拠点がある。

2021年8月20日/ロシア、首都モスクワのクレムリン、ドイツのアンゲラ・メルケル首相に花束を手渡すウラジーミル・プーチン大統領(Sputnik/クレムリン/Pool/AP通信)

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