◎ジョー・バイデン大統領はイスラエルとガザ地区を支配するイスラム過激派組織ハマスとの戦闘の終結に向けたイスラエル軍の努力を支持したが、国連安保理が求めた「戦闘の即時停止」は要求しなかった。
2021年5月16日/パレスチナ、ガザ地区、イスラエル軍の空爆の様子(ゲッティイメージズ/バシャール・タレブ/AFP通信)

5月17日、ジョー・バイデン大統領はイスラエルとガザ地区を支配するイスラム過激派組織ハマスとの戦闘の終結に向けたイスラエル軍の努力を支持したが、国連安保理が求めた「戦闘の即時停止」は要求しなかった。

バイデン大統領が慎重に選んだ言葉は、先日開催されたベンヤミン・ネタニヤフ首相との電話会談の内容とほとんど同じだった。国際社会はバイデン大統領に対し、イスラエルとパレスチナにより強い圧力をかけ、戦闘の終結だけでなく、長年の紛争の解決に向けた交渉を開始するよう促してほしいと考えている。

ホワイトハウスによると、バイデン大統領は17日に開催されたネタニヤフ首相との3回目の電話会談の中でイスラエルへの揺るぎない支持をあらためて約束したが、ハマスの弱体化を目的としたイスラエル軍の空爆と砲撃で民間人が死亡していることに懸念を表明したという。

AP通信によると、ガザ地区の死者は5月17日時点で子供61人と女性36人を含む212人に達し、1,300人以上が負傷したという。ハマスは上級司令官数十人の死亡を認め、他のジハード組織の幹部も数十人死亡したと伝えられているが詳細は不明。イスラエルでは子供を含む10人の死亡が確認され、少なくとも50人が重軽傷を負った。

ホワイトハウスは声明の中で、「バイデン大統領はネタニヤフ首相に、無実の民間人を保護するよう伝えた」と述べた。声明に精通している政府当局者はAP通信の取材に対し、「バイデン大統領はイスラエルを明確に支持し、停戦をハッキリと要求しないという決定は意図的なものである」と述べた。

匿名を条件にAP通信の取材に応じた当局者は、「大統領と上級補佐官は流血の増加と民間人の死を懸念しているが、前回の電話会談と同じく、ハマスから身を守るイスラエルの自衛権を支持した」と述べた。「今回の声明は、イスラエルの自衛権を支持するというホワイトハウスの決意を反映しています」

ネタニヤフ首相は17日遅くに開催された閣議の中で、「私たちは全てのイスラエル国民の平穏と安全を取り戻すために、必要な限りガザのテロリストを攻撃し続ける」と誓った。

バイデン大統領は先日開催されたパレスチナのマフムード・アッバース大統領との電話会談の中でパレスチナ人の安全と平穏を支持すると述べたが、ガザ地区をハマスに乗っ取られたアッバース大統領に戦闘を止める権限はない。アメリカはハマスをテロ組織に指定しているため、ガザ地区に使節団を送ることを拒否した。エジプトやカタールなどの中東諸国は双方と停戦に向けた交渉を継続しているが、事態の打開につながる大きな進展は見られない。

2021年5月17日/ワシントンD.C.ホワイトハウスのイーストルーム、ジョー・バイデン大統領(AP通信/エヴァン・ヴッチ)
2021年5月17日/パレスチナ、ガザ地区、イスラエル軍の空爆の様子(ゲッティイメージズ/アナ・スババ/AFP通信)

アメリカは16日に開催された国連安保理の緊急会合で、両国の戦闘に「重大な懸念」を表明する共同声明を阻止した。

ホワイトハウスのジェン・サキ報道官とジェイク・サリバン国家安全保障顧問は17日の会見で共同声明のブロックを擁護し、代わりに「アメリカは外交政策に焦点を当てている」と主張した。

バイデン政権は他の重要政策に焦点を当てているため、中東および中央アジアの紛争から手を引き始めている。アフガン撤退とイエメンのフーシ派に対するサウジ主導の戦争への支援の終了は、新たな戦争と民間人を巻き込む混乱に発展する可能性が高いと指摘されている。

平和な北欧諸国を旅しているアントニー・ブリンケン国務長官は最初の訪問地デンマークで、「イスラエルとハマスが戦闘の終結に関心を示した場合、アメリカは交渉を支援する準備ができている」と述べたが、停戦するかどうかは双方が決めることだと強調した。「停戦を追求するかしないかは当事者次第です。ハマスはイスラエルへの攻撃を停止しなければなりません」

おとぎの国デンマークで講演したブリンケン国務長官は、アメリカは気候変動協定の取り組みを推進し、アフガニスタンから米軍を撤退させ、バイデン大統領は最も差し迫った外交政策の優先事項に焦点を当てていると主張し、第三次中東戦争におけるアメリカの立場を擁護した。

一方、民主党のチャック・シューマ―上院院内総務は、進歩的な民主党員と社会民主主義者のバーニー・サンダース上院議員の一団に加わり、戦闘の即時停止を要求した。下院諜報委員会の議長、アダム・シフ下院議員(民主党)も週末に放送されたCBSニュースのインタビューの中でイスラエルとパレスチナに圧力をかけるよう求めている。

しかし、共和党のミッチ・マコーネル上院少数党首は、停戦に向けた圧力にイスラエルを含めることは間違っていると民主党員を蹴散らした。「民主党は双方双方と叫んでいますが、そもそも紛争を開始したのはテロリストであり、イスラエルはロケットの嵐から国民を守っているだけです。民主党はイスラエルには自衛権はないと主張しています」

マコーネル上院少数党首は、「アメリカは同盟国と並んで立たなければならない」と述べた。「バイデン大統領はテロリストの侵略から国民を守っている同盟国を支持しなければなりません。党内の不満の声に右往左往している場合ではありません」

共和党のリック・スコット上位議員は17日、イスラエルの攻撃を支持する決議案を提出すると発表した。現地メディアによると、19人の共和党上院議員がこれを支持しているという。

イスラエルは1967年の第三次中東戦争でガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸地区(東エルサレム含む)、およびゴラン高原を占領したが、国際社会はこれを認めていない。

聖地エルサレムを奪われた数百万人のパレスチナ人はガザ地区とヨルダン川西岸地区に押し込められ、みじめな生活を送っている。

2021年5月17日/パレスチナ、ガザ地区、瓦礫の中を進む子供たち(Khalil Hamra/AP通信)
2021年5月15日/パレスチナ、ガザ地区、空爆で死亡した女性2人と子供8人の合同葬儀(AP通信/Khalil Hamra)
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