◎イスラエル政府はこれまでのところ事件に関連する声明を一切発表していないが、同国の公共ラジオは匿名の政府情報筋の情報を引用し、「ナタンツ核施設で発生した一連の事件はモサドのサイバー攻撃によるもの」と報じた。
2021年4月7日/イラン中部ナタンツ核施設の衛星写真(AP通信/Planet Labs Inc.)

イランの当局者によると、4月11日に中部のナタンツ核施設で発生した「核テロ」により、ウランの濃縮に使用する遠心分離機を含む機器が破壊されたという。

イラン議会の核研究センター責任者を務めるアリレザ・ザカニ氏は13日の声明で、「一連の攻撃はイランの核開発プロセスに大きな影響を与えた」と述べた。

地元メディアによると、攻撃は地上から地下50mの間に設置された施設を狙っていたという。

イランはナタンツ核施設で発生した「停電」をイスラエルの「核テロ」と呼び、非難した。

イスラエル政府はこれまでのところ事件に関連する声明を一切発表していないが、同国の公共ラジオは匿名の政府情報筋の情報を引用し、「ナタンツ核施設で発生した一連の事件はモサドのサイバー攻撃によるもの」と報じた。

一方、停電被害に直面したイラン政府は記者会見の中で、ナタンツ核施設内の地下核プラント「フォード(Fordo)」で使用している遠心分離機をより高度なものに置き換え、現在製造している濃縮ウランの濃度を20%から60%に引き上げると発表した。

イラン核合意(包括的共同行動計画:JCPOA)は3.67%以上のウラン濃縮を禁止している。

<ウラン(U-235)の濃縮度>
・0.7%:標準
・2~5%:原子炉燃料(軽水炉用)
・3.67%以下:イラン核合意の規定値
・20%以上:高濃縮ウラン
・90%以上:核兵器用

2021年4月7日/イラン中部ナタンツ核施設の周辺の道路(ゲッティイメージズ)

イスラエルとアラブのメディアによると、イスラエル政府所有の船舶がアラブ首長国連邦(UAE)の海域で攻撃を受け損傷したという。

イスラエルのch12TVに情報を提供した匿名の情報筋は、「イランの報復攻撃を非難する」と述べた。しかし、イスラエル政府はこの事件についてもまだ声明を発表していない。

イラン政府はナタンツ核施設の遠心分離機が停電で破壊されたことを認めていたが、詳しい情報は提供していなかった。しかし、国営メディアによると、アリレザ・ザカニ氏は会見の中で「被害は甚大」と述べたという。

ザカニ氏は記者団に対し、「イスラエルは各施設の電気システムの穴に到達し、数千の遠心分離機を一瞬で損傷させた」と述べた。「私たちは11日のテロを受け、平和的な核開発をさらに推し進めることを誓いました。イスラエルは核テロでイランを止めたと思っているようですが、それは大きな間違いです

イランのウラン濃縮は世界の主要懸案事項のひとつだが、イラン政府は平和的な核開発と主張し、製造したウランは主に原子力発電所の核燃料、農業、医療などの民間文化で使用すると述べている。

ナタンツ核施設の遠心分離機は4月10日により高度なものに置き換えられ、運用を開始していた。

アメリカの諜報当局はニューヨーク・タイムズ紙に、「停電が原因と思われる一連の大爆発で地下核プラント(フォード)の遠心分離機に電力を供給していた施設は完全に破壊された」と語った。諜報当局者によると、ウラン濃縮を再開するまでには、少なくとも9カ月はかかる見込みだという。

イランのモハンマド・ジャヴァード・ザリーフ外相は13日の記者会見で「テロの首謀者に復讐する」と述べ、暗黙のうちにイスラエルを非難した。

また、イラン最高国家安全保障最高評議会に加盟しているヌール通信社は政府情報筋のコメントを引用した。「政府はテロの首謀者をすでに特定しており、関わった者たちを打倒する作戦の開始を指示しました」

イスラエルは先日、イランの核合意と経済制裁解除に関連する交渉の開始について言及したジョー・バイデン大統領を遠回しに非難していた。

バイデン大統領はイラン核合意に復帰し、イランのウラン濃縮を合意の基準値以下に抑えたいと考えている。しかし、イランは「合意への復帰はアメリカが科している経済制裁の全面解除」を条件としており、解除されない限りウラン濃縮を継続すると主張している。主要大国(中国、ドイツ、フランス、イギリス、ロシア)は合意の再開に向けた道筋を示せていない。

アメリカとイランの当局者は、オーストリアの首都ウィーンでヨーロッパの仲介役を通した間接交渉を継続している。

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