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ヒズボラ首長、レバノン政府にイスラエルとの協議中止求める


問題となっている協議は米国仲介のもとでレバノンとイスラエルの大使が対面するもので、両国間では数十年ぶりとなる直接対話である。
レバノンの親イラン組織ヒズボラの指導者カセム師(AP通信)

レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラの指導者カセム(Naim Qassem)師は13日、レバノン政府に対し、米ワシントンDCで予定されているイスラエルとの直接協議を中止するよう求めた。カセム師はテレビ演説で、「この協議は無意味である」と批判し、イスラエルとの交渉に応じること自体が不適切だとの立場を明確に示した。

問題となっている協議は米国仲介のもとでレバノンとイスラエルの大使が対面するもので、両国間では数十年ぶりとなる直接対話である。レバノン政府はこの場を利用して停戦実現を目指す考えだが、ヒズボラ側はこうした外交的アプローチに強く反発している。

カセム師は演説の中で、ヒズボラはイスラエルの軍事行動に対抗し続けると強調し、武力による抵抗を継続する姿勢を改めて示した。また、交渉は米国とイスラエルの利益に沿うものだと批判し、レバノン政府が参加すれば主権が損なわれる恐れがあると主張した。

今回の対立の背景には3月初めに激化したイスラエルとヒズボラの戦闘がある。戦闘は米国とイスラエルによるイラン攻撃をきっかけにヒズボラがイスラエル北部への攻撃を開始したことで拡大し、その後イスラエル軍がレバノン南部への軍事作戦を強化した。これにより2000人を超える死者を出し、100万人以上が避難を余儀なくされるなど、人道状況が深刻化している。

特にレバノン南部の戦略的要衝では激しい地上戦が続き、イスラエル軍は同地域の制圧を目指して攻勢を強めている。一方、ヒズボラもロケット攻撃などで応戦、双方の衝突は収束の兆しを見せていない。

こうした中で米国は停戦に向けた外交努力を進め、今回のDC協議もその一環である。レバノン政府内では停戦を優先すべきだとの意見がある一方、ヒズボラやその支持層は交渉自体に否定的で、国内の意見は大きく分裂している。

レバノン政府は先月、ヒズボラの軍事活動を違法とする措置を打ち出し、国家が戦争と平和の決定権を有すべきだとする姿勢を強めている。これに対しヒズボラは武装解除に強く抵抗し、政治と軍事の両面で緊張が高まっている。

今回のカセム師の発言はこうした国内対立をさらに浮き彫りにするものとなった。レバノン政府が外交による解決を模索する一方で、ヒズボラは武力抵抗を優先し、交渉の正当性そのものを否定しているためである。

総じて、ワシントンDCでの協議をめぐる対立は単なる外交方針の違いにとどまらず、レバノン国家の主権や安全保障の在り方をめぐる根本的な対立を映し出している。戦闘が続く中、外交か武力かという選択が国内政治を揺るがしており、今後の動向は中東情勢全体にも大きな影響を与える可能性がある。

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