スーパーモデル

ニューヨーク州の人口は約800万人。その中心、小さなマンハッタン島の人口は約160万人ほどと推定されるそうだ。正確な数が分からない理由は、不法入国者や様々な理由で住民登録できない方がいるためである。

マンハッタンは人で溢れ返っている。「人類のるつぼ」と呼ばれる通り、世界中のありとあらゆる人種が島内を行き来し、混雑するエリアになると人をかき分けながら進まなければならない。

マンハッタンの都市圏人口はよく分からないらしい(ニューヨーク州は約2,200万人)。ニューヨークの某大学教授曰わく、「マンハッタンの都市圏人口に興味を抱く人はいない。この街は世界の中心なんだ。それでいいじゃないか」と、チェックするだけ時間の無駄、という感じだった。

前置きが長くなった。今回はマンハッタンを象徴するパワー系職業、モデルという仕事について少し考えてみたい。

まず、私がイメージするモデルは、雑誌などでカッコいい服を着てポーズを決めてしまう人と、ファッションショーでランウェイを歩く女性たちである。

ちなみに、絵画や彫刻などの題材を提供するためにポーズをとる方もモデル、石鹸のCMで美しい手の甲だけを見せる方も同じくモデルである。

マンハッタンを歩いていると、異様に足と首が長く、顔の小さいキレキレ(?)の女性を頻繁に目撃する。身長は大体175cm以上で8頭身から9頭身、枝のように細いものの、出るところはしっかり出ているから不思議だ。

女性ファッション雑誌の表紙を飾るような「スーパーモデル」たちが街を縦横無尽に行き来し、私は含む男たちはその様子をジッとうかがう。ただし、立ち止まって凝視すると渋滞の原因になってしまうので、やめた方がよいと思った。

私はファッション業界に全く詳しくない。しかし、「シンディ・クロフォード」「ナオミ・キャンベル」「ケイト・モス」「ジゼル・ブンチェン」「ミランダ・カー」ぐらいは一応知っている。

本物のシンディ・クロフォードを見た時は、あまりのカッコよさに唖然とし、同じ人間とは思えない、と心の底から思った。マンハッタンには世界トップクラスのスーパーモデル、次世代のスーパーモデル候補がウロウロしているのである。

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一般女性vsモデル

ニューヨークの一般的な女性たちはモデルのことをどう思っているのか?

友人のサラ(仮名)は、「足と首がキリン並みに長い。あと、顔が異様に小さいせいで、脳ミソのサイズはネズミ並み。つまり間抜けってこと」と敵意むき出しだった。

他の女性はどうか。仕事で付き合いのある既婚者のサリー(仮名)にモデルをどう思うか聞いてみた。「顔がキレイでスタイルがいいだけの女。あの職業は言語能力に問題のある間抜けしかできない。私はハーバード卒の淑女なのよ。分かる?」

質問する相手を間違えたかもしれない。ファッション業界にコネを持つ友人A(ゲイ)の元上司、サバサバ系のマチルダ女史(45歳:仮名)に伺ってみた。

彼女たちはニューヨークの象徴。皆、ものすごい力を秘めているの。モデルになれなかった一般女性たちは、彼女たちの美貌を”生まれつき”と決めつけているけど、皆、努力で勝ち取っているのよ。頭を使う仕事ではないけど、最近はモデルと自分のビジネスを両立させている子も多い。今夜、モデルの集まるパーティに連れて行ってあげる」

マチルダ女史はファッション関連の仕事を請け負う企業の取締役である。かなりのパワー系にして、独身。「ニューヨークのリッチな女性は結婚しない」と言い、タワーマンションの上階で悠々自適に暮らしている。

ニューヨークの一般女性は、本当にモデルを敵視しているのだろうか?私に言わせてもらうと、ニューヨークの一般女性は美しく、そしてキラキラ(?)してる。なぜかは分からないが、道行く女性の歩く姿、雰囲気、表情を見ると、明らかに日本の女性とは違うと感じてしまうのだ。

スタイルに個人差があるのは当然。胸やお尻の形も人それぞれである。私は初めてニューヨークに足を踏み入れた日から現在まで、キラキラしている一般女性たちを羨望の目で見ていた

しかし、彼女たちは明らかにモデルを敵視しているように見える。私はマチルダ女史に思い切って聞いてみた。「一般女性はモデルに対して劣等感を持っているのだろうか?私の友人たちは、皆、モデルに敵意を示した。しかし、馬鹿アホ間抜けとこき下ろしながらも、嫌いなモデルの着た服をチェックし、気に入ったものがあれば購入する」

マチルダ女史:「良いイメージを持っている人は少ないと思う。スタイルと顔が良いだけでチヤホヤされるのが腹立たしいのでしょうね。でも、ニューヨークの一般女性たちも美しく、皆、力を持っている。要は、モデルをゴシップのネタにしたいだけなのよ。そうでなければ、ショーを見に行ったり、雑誌を買ったりしないでしょう?」

何となく理解できたような、理解できないような、微妙な答えである。少なくとも私の友人たちはモデルを敵視しながらも、雑誌は嬉々としてチェックしている。その日の夜、私はマチルダ女史に連れられ、マンハッタンの某所で開催されたパーティに出席した。

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モデルたちの考えは?

某所で開催されたファッション関連事業のパーティに足を踏み入れた瞬間、「来る場所を間違えた」と感じざるを得なかった。まさにモデルのバーゲンセールである。

参加する男性陣は、一目で業界関係者と分かる人、ビジネスマン、男性モデルと思われるカッコいい男など。皆、モデルを眺め、標的に狙いをつけるハンターのような目をしている。

某人気ファッション雑誌のモデルを務めるリサ(仮名)に話を伺うことができた。リサはカナダ出身の22歳、身長180cmぐらい、体重は55kgぐらいと推察した。物凄く細い。

リサはスーパーモデルを目指してニューヨークに単身乗り込み、色々頑張っているらしい。16歳の頃にスカウトされ、この業界に興味を持ったとのことだった。

30分後、私は気になっていたことを質問してみた。

私:「私の友人たちはモデルに敵意を持っているように思える。皆、素晴らしい女性ばかりなのに、なぜかモデルを間抜けとこき下ろし、馬鹿にする。リサは一般女性から敵意を向けられたことはあるか?」

リサ:「敵意を感じたことはあるけど気にしない。そもそも、私たちモデルは、自分のことを一般女性だと思っている。私はごく普通の一般女性よ。メディアで特集を組まれたり、映画に出演したわけでもない。ただモデルを仕事に選んだだけ。あと、私たちも道ですれ違うセンスのいい女性やカッコいい女性に注目する」

少なくともリサの脳ミソはネズミサイズではない、と思った。話も通じるし、ジョークにはジョークを返してくれた。電話番号の交換に成功したので、ひとまず別の女性にも取材すると言い、その場を離れた。

ファッションモデルとして活躍するソフィア(24歳:仮名)は、ブルックリン区出身のアフリカ系アメリカ人である。身長180cmぐらい、かなりの細見だが、胸の盛り上がり具合に驚いた。お腹や太もも周りの脂肪だけ落とす方法があるのだろうか?

リサと同じ質問をしてみた。

ソフィア:「この業界で生き残ることは大変なの。私は努力してこの身体を維持してる。フライドチキンやピザを食べたくなることもあるけど、我慢してる。スタイルがいいから、という理由だけで敵視されるのは心外ね。あなたたちこそ、もっと努力しなさい、と言いたくなるわ。あなた、年収はいくら?」

ソフィアに年収を伝えると、「ふーん」と言い残しどこかに去ってしまった。彼女の言うことはもっともだと思う。可愛く生まれた子でも、努力しなければ太ってしまうかもしれない。モデルたちは努力し、敵意を向ける一般女性のことをほとんど気にしていないようだ。

後日、サラに取材の成果を伝えると、「モデルは自分たちの価値を理解してないのね。皆、彼女たちに何かしらの憧れを持っている。だってカッコいいじゃない。間抜けでムカつくけど」と言った。

リサは年収のことを聞いてこなかったので、ランチに誘ってみると、あっさりOKしてくれた。10年以上前の話だが、自分がモデルと付き合うことになるとは夢にも思わなかった。

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