ロックダウンに対する態度、コンプライアンス、いがみ合う民主党と共和党・・・

リーダーシップ

アメリカ国民の動向は、コロナウイルスに対する党およびリーダーの態度に大きく影響される。共和党支持者の大半は、民主党支持者よりも楽観的であることがその動向によって示された。100万人以上の感染者を出し、69,000人以上が死亡したパンデミックに対するロックダウン対策を支持する共和党支持者は極めて少ないように思える。

コロナウイルスは人から人に伝播する感染症である。世界中でパンデミックを引き起こし、人類は第二次世界大戦に匹敵する脅威と対峙せざるを得なくなった。それを食い止めるべく、指導者たちは科学の力をフル活用し、多大な労力と犠牲を払いながらも数カ月かけて感染リスクの低減に努めてきた。

現時点で最も多くの犠牲を払った国がアメリカである。トランプ大統領の”初動の遅さ”が感染を拡大させたか否かは誰にも分からないが、今、同国が酷い状況にあることは確かである。ロックダウン以降、失業者は約3,000万人増加、株価と原油価格の大暴落を招き、また、小売店の倒産も相次いでいる。

それにも関わらず、国の命運をかけたロックダウンは、連邦政府ではなく州政府によって指示されている。地方分権、権力の一極集中を避ける、という観点から考えると、州知事に強い権限を与えることは正しいように思える。しかし、それは、国を統率するリーダーが「正しくリーダーシップを発揮すれば」、の話である。

ミシガン州とワシントン州では、共和党を支持する一部の抗議者たちが州議事堂前に押し寄せ、「専制政治」「自由」と書かれたプラカードを掲げた。それを見たトランプ大統領は、抗議者たちを擁護し、両州知事を非難する声明を発表、これは「ロックダウンを解除せよ」と恫喝したに等しい行為である。

さらに先週、何百人もの抗議者がミシガン州議会議事堂を襲撃し、ロックダウン期間を5月15日まで延長すると発表した州知事を脅迫した。同州はコロナウイルスにより最も大きな被害を受けた地域のひとつ、連日100人以上が死亡し、医療体制は危機的状況に陥っていた。

議事堂を襲撃した抗議者たちは、州知事を「ヒトラー」に例えて非難し、経済活動の早期再開を求めた。この違法な行いに対しトランプ大統領は、「非常に素晴らしい人々だ」と表現した。その後も、同国内ではロックダウン解除を求めるデモ活動が相次いでいる。

米国とコロナウイルス/経済再開への抗議と本当は働きたくない人たち

共和党支持者

これらのデモ活動が非生産的であること、新たなパンデミックを引き起こす要因になりかねないことは確かである。ではなぜ、共和党の支持者たちは活動を続けるのか。

パンデミックは中国の陰謀、コロナウイルスの起源は中国にある、トランプ大統領は記者会見、テレビインタビューなどの中で繰り返し発言してきた。また、一部の保守的な共和党議員なども同様である。リーダーたちの発言に刺激を受けた支持者、過激な思想を持つ極右活動家たちが誤った行為に出ることは時間の問題だった。
トランプ大統領/コロナウイルスは中国武漢研究所で誕生と断言

ニューヨーク大学心理学准教授のジェイ・ヴァン・バベル氏は、「当初、トランプ大統領はコロナウイルスを軽視し、ロックダウンの必要性を真剣に考えていなかった。しかし、今の状況を見れば、当時の対応が誤りだったことは一目瞭然。これに対し大統領御用達のFOXニュースは、パンデミックを軽視したトランプ大統領をフォローすべく、長い時間をとってこの失態から目をそらす報道を続けた。それが功を奏しつつあるのだろう」と述べた。

経済活動の再開およびロックダウンを解除しなければ、アメリカと世界はボロボロになる。一部の共和党支持者たちは、そう声高に訴え過激な行動に出た。経済を動かすことが喫緊の課題であることは間違いない。そして、それを最も望む、必要とするのは国民である。

生きてゆくためには働かねばならない。今のままでは生活もままならない。多くの共和党支持者がそう考え行動しているはずだ。そしてさらに、愛すべきトランプ大統領の失態から国民の目をそらすことができれば最高である。

リーダーたちは、全ての責任を中国に押し付けたい。そして共和党有支持者たちは、リーダーたちを支持しつつ、自分の生活を守りたい。結果、支持者たちはトランプ大統領が最も望むロックダウン解除と経済活動再開を支持しつつ、自分たちの生活を守る行動(デモ活動)に打って出た。

仮に中国が諸悪の根源だったとしても、現に今、コロナウイルスで多くの人々が亡くなっている。中国政府への訴訟や抗議は、全てにケリをつけてから考えるべきだ。医師や医療関係者たちは命を削って戦い、疲弊している。今、共和党支持者の圧力に屈し、闇雲に経済活動を再開させれば、戦っている者の努力だけでなく、亡くなった者の死さえも無駄にしてしまうだろう。

ケンタッキー州の共和党議員であるランド・ポール氏は、コロナウイルスに感染するも見事完治させ、お世話になった病院でのボランティア活動を継続している。言うまでもないことだが、全ての共和党議員がトランプ大統領の発言を擁護しているわけではない。

最新の世論調査では、民主党支持者の95%以上が社会的距離の確保と段階的かつ慎重なロックダウンの緩和を支持。共和党支持者の80%以上も同様の考えであることが分かった。皆、経済活動の再開を望んではいるが、誤ったリーダーシップに多少なりとも幻滅したのかもしれない。

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