世界で広がる「危機への備え」、食料備蓄から自家発電まで、個人の防災意識に変化

世界各地の事例は、個人の備えが不安の表れであると同時に、非常時に家族の生活を守るための現実的な対応になっていることを示している。
パニックルームのイメージ

自然災害や異常気象、地政学的緊張、停電など、社会の機能を揺るがす危機に備え、日常生活の中で食料や水、電源などを蓄える人が世界各地で増えている。英国では政府が国民に緊急時の備蓄を呼びかけたことを受け、缶詰やラジオ、懐中電灯の販売が増加した。こうした備えは英国では比較的新しい動きだが、災害や安全保障上の不安を抱える国々では、以前から家庭単位の危機管理が定着している。

スウェーデンのストックホルムに住む30歳のアンドレアス・ウェンネルベリ(Andreas Wennelberg)さんは、2年前に政府から各家庭へ配布された冊子をきっかけに備蓄を始めた。冊子は「危機や戦争が起きた場合」に備えるための行動や必要物資を説明したものだ。現在は地下室に手回し式ラジオ、水10リットル、現金約200ユーロなどを保管している。政府の呼びかけは意識を変えるきっかけになったものの、本人は必要以上に不安を感じているわけではないという。

米メリーランド州の理学療法士ダン・C(Dan C)さんは、子どもが生まれたことを機に備蓄を本格化させた。数年前の厳冬期には、停電で家族が2日間電気を使えなくなり、準備の不足を痛感した。これまでに約6000ドルを投じ、地下室に約150ガロンの水や長期保存食品、浄水用の薬剤、医療用品などを保管している。食料はオート麦やキヌア、ピーナツバターなどを日常の料理に使いながら補充する「循環型の備蓄(ローリングストック)」を実践し、4人家族で約3カ月分を確保する。太陽光パネルやキャンプ用コンロ、テントなども備え、停電時にも生活を維持できるようにしている。本人は、親としての責任や住宅管理の一環だと説明する。

日本では、東京都内に住むアユミさん(仮名)が地震や台風、猛暑に備えて非常用持ち出し袋を用意している。2024年の能登半島地震を経験したことが、防災意識を改めて高める契機になった。

米ジョージア州のニコール・ボンズ(Nicole Bonds)さんも、悪天候の頻度が増えたと感じ、乾電池や衛生用品、予備電源などを少しずつ買い足している。オランダのマイケル・ストゥート(Michael Stuut)さんは洪水や停電、戦争などを想定し、水や食料、現金、電源設備を保管している。

こうした備蓄の内容や規模は、住む地域や家庭の事情によって異なる。災害などで物流や公共サービスが停止した場合に備え、少なくとも72時間分の物資を家庭で確保するよう求める国もある。

重要なのは、危機を過度に想像して大量購入に走ることではなく、実際に起こり得る事態を想定し、日常的に使う物資を計画的に補充することだ。世界各地の事例は、個人の備えが不安の表れであると同時に、非常時に家族の生活を守るための現実的な対応になっていることを示している。

あなたへのおすすめ