◎ドイツ政府はロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機が迫っていることから、年内停止が決まっている原子力発電所の将来について議論している。
2021年9月24日/ドイツ、首都ベルリンで行われた「Fridays for Future」の集会、環境活動家グレタ・トゥンベリさん(Markus Schreiber/AP通信)

スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリ(Greta Thunberg)さんが11日、ドイツ政府のエネルギー政策に苦言を呈した。

ドイツ政府はロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー危機が迫っていることから、年内停止が決まっている原子力発電所の将来について議論している。

グレタさんはドイツ公共放送ARDのインタビューで、「原発があるのに石炭に注目するのは間違っている」と語った。

またグレタさんは原発に反対する人々に理解を示したうえで、温室効果ガスの排出量を増やさないことが重要だと強調した。

グレタさんは「ドイツ国内で稼働している原発3基を停止させないことは地球にとって良いことだと思うか?」という質問に対し、「原発を止めて石炭火力に頼るのは大間違い」と答え、石炭に頼るぐらいなら原発を稼働させ続けた方がマシという見方を示した。

反原発を推進する緑の党のハーベック(Robert Habeck)副首相兼経済・気候保護相は原発を稼働させても天然ガス不足に対処することはできないと指摘している。

グレタさんは「エネルギー危機を乗り超えたら原発を止めるべきだと思うか?」という質問に対し、「場合による」と答えた。「原発を止めて石炭を燃やすのは間違いです!」

ハーベック氏は最近、稼働中の原発2基を例外的に来年4月まで稼働させると示唆したが、安全上の理由からそれ以上の稼働には反対している。

またハーベック氏はロシアが欧州への天然ガス供給量を減らしたことを受け、石炭を含む火力発電所数基の再稼働を承認している。

ドイツの環境活動家や団体はこれ以上化石燃料を燃やすと気候変動目標を達成できなくなると警告している。

一方、保守派の議員たちは現在の危機的な状況(燃料・電気・ガスの高騰)を考えると、政府はエネルギーを確保するためにあらゆる手段を講じるべきだと指摘している。

グレタさんの発言はこれまで彼女の活動を否定したり、厳しく批判してきた自由主義者やドイツの右派政治家から歓迎された。

グレタさんは石炭火力に頼るドイツの決定が「化石燃料に依存し過ぎるとどうなるかを示している」と述べ、化石燃料インフラに投資する政府の計画を非難し、その代わりに再生可能エネルギーの拡大に焦点を当てるべきだと指摘した。

ドイツ政府が計画している新たなガス火力発電所・ガス貯蔵施設の建設は厳しい環境規制をクリアしなければならない。

グレタさんはスウェーデンを含む一部の国の政治家が国民に省エネを勧めることを嫌がっていると指摘した。「ドイツ政府は節電を繰り返し呼びかけていますが、スウェーデンでその話をすることは非常識と言われています...」

またグレタさんは「気候変動を一瞬で解決する銀の弾丸はない」としたうえで、まずは温暖化が人類にもたらす影響を認識することが重要だと訴えた。

ドイツ、ノルトライン・ウェストファーレン州の石炭火力発電所(Getty Images)
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