◎報告書によると、ボーイング社のマネージャーが737Maxのフライトシミュレーターテストを受けたパイロットに不適切なアドバイスを与えたという。
◎連邦航空局(FAA)はボーイング社の不適切な行為を隠し、737Maxの飛行禁止命令を解除したと疑われている。
2019年12月11日 AP通信/ユナイテッド航空のボーイング737Max

米上院の調査官は、ボーイング社が737Maxのフライトシミュレーターテストを受けたパイロットに「不適切な影響を与えた」と報告した。

12月18日に公表された上院通称委員会の報告書によると、不正を指摘された連邦航空局(FAA)は内部告発者への報復を続けているという。またFAAの親機関である運輸局も、事案に関連する資料の提出を意図的に怠り、調査官を妨害したという。

これに対しFAAは、「上院の報告書には根拠のない主張が多数含まれている」と反論し、737Maxのテストおよびボーイング社を擁護したうえで、徹底的かつ公正な調査を要求した。

FAAの声明:
「ライオン・エア610便とエチオピア航空302便の墜落事故に与えた安全上の問題は、必要な設計変更を通じて対処されたと確信している」

ボーイング社は上院の報告について、「調査結果を真剣に受け止める」と述べたが、不正疑惑については言及しなかった。

半年の間に2度墜落事故を起こした737Maxは、2019年3月に飛行禁止命令を受けた。

先月、FAAはボーイング社が主要な飛行制御システムの更新とその他の修正を終えたとして、飛行禁止命令を解除した。

Getty Images/ライアン・エア610便、海上で発見された乗客の遺品

内部告発者(FAAの元安全検査官)によると、「ボーイング社の代表者がフライトシミュレーターテストを受けたパイロットにアドバイスを与えた」という。そして、FAAはこの事案を適切に報告せず、飛行禁止命令の解除に踏み切った。

FAAはフライトシミュレーターの不具合にテストパイロットが気づき、処理しただけと反論した。ボーイング社はこの不具合の修正に数カ月費やしている。

内部告発者は、「フライトシミュレーターテストに招かれたボーイング社のマネージャーの情報が意図的に削除された」と述べ、調査官も「FAAが自分の身を守るためにマネージャーの関与を隠したと信じている」と指摘した。

上院通称委員会のロジャー・ウィッカー委員長(共和党)は声明の中で、「報告書は航空機の安全に関わる失敗と、FAAのリーダーシップの欠如を詳述している」と述べた。

ロジャー・ウィッカー委員長:
「FAAは737Maxに関わる全てのテストを完璧に監視する必要がある」

ウィッカー委員長と民主党のマリア・キャントウェル上院議員は、新しい飛行機のフライトを許可するFAAの手続きに変更を加える法案を提出、可決された。

737Max墜落事故~飛行禁止命令解除までの経緯

・2018年10月29日、ライアン・エア610便墜落。死者189人(乗客181人、乗組員8人全員)

・2019年3月10日、エチオピア航空302便墜落。死者157人(乗客149人、乗組員8人全員)

・2019年3月11日、連邦航空局(FAA)、737Maxの飛行禁止命令を発効。対象エリアは全世界。

・2020年11月18日、FAA、737Maxの飛行禁止命令を解除

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