トランプ「延期だ」、共和党「ダメだ」

7月30日、共和党のトップは、「11月の大統領選挙は詐欺の懸念があるため、延期すべき」と主張したトランプ大統領の提案を却下した。

共和党上院のミッチ・マコーネル党首と下院のケビン・マッカーシー党首は、どちらもトランプ大統領の提案を拒否。大統領選挙は予定通り開催されなければならない、と述べた。

いかなる理由があろうと、大統領選挙を遅延するためには議会を通過、承認を得なければならない。トランプ大統領にはそれを延期させる権限がなく、また、企みが成就する可能性も限りなくゼロに近い。

以前、トランプ大統領は郵便投票を「詐欺、不正確」と非難、いかなる理由があろうと投票所に足を運び、皆の見ている前で投票しなければならない、と主張していた。

コロナウイルスの感染拡大が続く中、トランプ大統領は「郵便投票は民主主義を揺るがす詐欺と欺瞞に満ちた投票方法であり、取り返しのつかない過ちを生むだろう。しかし、コロナウイルスが蔓延する今、投票所に足を運ぶのは危険極まりない。国民の命を守るために、ウイルスが終息するまで大統領選挙は延期すべきだ」と述べた。

郵便投票が詐欺と欺瞞に満ちている証拠はほとんどない。しかし、その危険性が全くないかと言えば、そうでもない。トランプ大統領は長い間、郵便投票に反対の立場をとっていた。

各州の代表者たちは、コロナウイルス感染予防の観点から、郵送による投票を容易にしたいと考え、条例やルールの見直し等を進めている。

トランプ大統領が選挙の延期を主張した理由は、1930年代の世界恐慌以来となる記録的、壊滅的なアメリカ経済を象徴する”数字”が発表されたためである。

マコーネル上院議員はケンタッキー州地方局WNKYの取材に対し、「大統領選挙が延期されたことはない。世界大戦、世界恐慌、南北戦争、尋常ならざる危機に直面した時も、連邦政府は予定通り選挙を行った。2020年11月3日、アメリカは予定通り第59回大統領選挙を行う」と述べた。

この発言を受け、マッカーシー下院議員も声明を発表。「連邦政府は大統領選挙の延期など考慮すらしていない。コロナウイルスが終息していなければ、郵便投票を行えばよいだけだ。我々は当日に向けて準備を進める」と語った。

一方、チームトランプの一員、リンゼイ・グラハム上院議員は記者団に対し、「良い考えではない」と反対の立場をとった。

グラハム議員は記者から「マイク・ポンペオ国務長官が選挙延期作戦に引き込まれるかもしれない。大統領選挙を延期することは可能か?」と問われ、「良くない兆候だ。アメリカ合衆国の法律では、権限は議会にある。司法に判断を委ねる可能性については・・・良くない兆候だ」と述べた。

トランプ大統領の再当選キャンペーンチームで報道官を務めるホーガン・ギドリー氏によると、大統領は数日前から意見定期するつもりだったという。

欧州、アジアおよびオセアニア地域は、コロナウイルスの第一波を何とか抑え込み、秋から冬にかけて始まるであろう「第二波」への警戒を強めている。しかし、超大国アメリカは第一波を抑え込むことに失敗し、長いトンネルから抜け出せずにいる。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、7月31日時点のアメリカの累計感染者数は458万人超、15.4万人以上が死亡している。

トランプ大統領が「大統領権限で11月3日の選挙を延期できる」と、もし少しでも考えているのであれば、誰かが「できない」と教えてあげるべきだ。

大統領選挙の延期などあり得ない、と民主党だけでなく共和党員からも総スカンを食らった直後、トランプ大統領は、「私はただ投票の問題点を指摘しただけだ!!」と怒りのツイートを発信した。

トランプ大統領は11月3日の投票が「不正・悪意・疑惑・疑念・裏切り・犯罪」に満ちていると全力でアピールし、コロナウイルスの影響でズタズタに引き裂かれたアメリカの景気を立て直すまで選挙は延期したい、と本気で考えているように思える。

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オバマ前大統領とブッシュ前大統領

トランプ大統領の選挙延期発言は”予想通り”炎上し、国民の目を第2四半期のGDPから逸らすことに成功した。

トランプ大統領は財政再建に頼った政治キャンペーンを繰り広げてきたが、「-32.9%」の衝撃はこれまでの努力をコナゴナに叩き伏せ、チームトランプを絶望の底に叩き落した。

いずれにせよ、トランプ大統領は11月の選挙が苦しい戦いになると理解している(はず)。勝利を確信する余裕のある候補者であれば、突然突拍子もないツイートを発信したりしない。

7月31日午後の記者会見で、トランプ大統領は「選挙の延期など望んでもいない。しかし、郵便投票には疑わしい点が多すぎる」と改めて主張した。

また、「私は予定通り大統領選挙を行いたいと考えている。しかし、不正な選挙は民主主義国家としてあり得ないし、見たくない。有権者の投票用紙が奪われ、不正に書き換えられるような事態になれば、アメリカの恥として一生語り継がれる。もし郵便投票が実現すれば、第59回アメリカ合衆国大統領選挙は、恥、疑惑、疑念、不正にまみれた選挙になるだろう」と付け加えた。

6月、ニューヨーク州は民主党の予備選挙(郵便投票と直接投票)を実施した。しかし、投票の集計には予想以上に時間がかかっており、結果はいまだに判明していない。

アメリカのメディアによると、「正しく記述されていない」「投票期間外を示す消印が付いている」などの影響で、無効票が大量に発生する可能性もある、と警告している。

ワシントン・ポストは、トランプ政権下で実施された米国郵政公社(USPS)のコスト削減策の影響で、11月の郵便投票に割り当てる人員を確保できない可能性もある、と報告している。

既に述べた通り、トランプ大統領に選挙日を延期する権限はない。これは法律によって保障されているため、現時点で11月3日の投票日が変更される可能性は限りなくゼロに近い。

日付を変更したい場合は、下院と上院の両方で承認を得なければならない。下院は民主党が過半数を占めており、「投票の延期などあり得ない」とナンシー・ペロシ民主党下院議長は断言している。

アメリカ合衆国憲法の専門家によると、大統領選挙を2021年に延期したいのであれば、議会の承認を得たうえで、憲法も改正しなければならないという。

7月、カリフォルニア州、ユタ州、ハワイ州、コロラド州、オレゴン州、ワシントン州の計6州が11月の選挙を完全郵便投票で行う(直接投票も可)と発表した。なお、他の州でも現在検討が進められている。

これらの州では、登録された全ての有権者に郵便投票用紙が送付される。有権者は所定の期間内に支持者もしくは党名を記載し返送するか、放棄するかを選ぶ。ただし、特定の条件を満たす者に関しては、直接投票も認められる。

7月30日、公民権運動の指導者であるジョン・ルイス氏の葬儀に出席したバラク・オバマ前大統領は、一部の共和党員が「ルイス氏は有権者の抑圧を試みた男」と指摘したことを強く批判した。

ルイス氏は今月初めに80歳で亡くなった。

ルイス氏は、マーティン・ルーサー・キングJrを含む「ビッグシックス」公民権運動指導者のひとり、1963年3月のワシントン大行進でも中心的役割を果たした。

アトランタ市、エベニーザーバプティスト教会で行われた葬儀の中で、オバマ氏はトランプ政権に攻撃を仕掛けた。

「私たちは、連邦政府のエージェントたちが平和的なデモ参加者に対し、催涙ガスや警棒を使用するところを何度も目撃した・・・トランプ政権は、自分たちに都合の良いID法を国民に課し、また、一部の投票所を閉鎖して国民を選挙から遠ざけようとしている」

オバマ氏は、コロナショック後の世界で郵便投票を行うことの意味と重要性、米国郵政公社が果たすべき役割について説明した。また、アメリカの投票システムを見直すべき、と以下の案を主張した。
●全てのアメリカ人に投票権を与える(投票権を”登録していない”有権者は、原則自動登録)。
●罪を償い、刑務所を出所した者たちにも投票権を与える。
●新しい投票所の設立。投票システム(郵便投票)の見直し。
●早期投票の全国拡大。
●投票日は祝日に設定。休暇が取れない労働者に配慮する。

オバマ氏は亡くなったルイス氏に対し、「私はアメリカの民主主義を守るために最善を尽くす。命が続く限り、彼が皆に示した大義を守らなければならない」と述べた。

葬儀には、ビル・クリントン前大統領、ジョージ・W・ブッシュ前大統領、ナンシー・ペロシ下院議長なども出席した。

共和党員のブッシュ前大統領は、「ジョン・ルイスのおかげで、私たちは、今日、より良く高潔な国に住むことができている。彼は人類を信じ、そしてアメリカを信じていた」と述べた。

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