悲劇は繰り返す、かもしれない

低所得者層、貧困層

中国武漢研究所で発生したとされるコロナウイルスは、中国本土を超え欧米に上陸。2月中旬、トランプ大統領は「ウィルスは消えてなくなるだろう。アメリカ経済が影響を受けることはない」と明言したが、その後アメリカがどうなったか、現在どうなっているかはご存じの通りだ。

映画館の従業員、喫茶店の店員、レストランのウェイター、タクシーの運転手、同国内で働いていたたくさんの人々が職を失い、路頭に迷っている。パンデミック、ロックダウンの経済的犠牲者たちの数は日を追うごとに増え、今なお増加し続けている。

フルタイムで仕事をしていた人々の多くが、家族を養うために福祉・支援に頼らざるを得なくなった。ロックダウンのタイミングが少し遅れた結果、同国は甚大な被害を受け、そして、最も厳しい立場に立たされたのは低所得者層だった。また、同じく低所得の移民コミュニティも仕事を失い、明日の食糧すらままならない状況にある。

アメリカ最大の震源地(グラウンド・ゼロ)になったニューヨーク州の超富裕層(住人の1%)たちは、街を離れ、ハドソンバレーやハンプトンズなどの隠れ家に避難、嵐が過ぎ去るのをゆったりと待っている。しかし、低所得者層、貧困層に隠れ家などない。彼らの多くが何世代にもわたる古い住居に住み、時には10人以上の大所帯で狭い部屋をシェアする。

結果、コロナウィルスはヒスパニック系とアフリカ系アメリカ人を殺し続け、パンデミックは許容できないレベルに達した。貧困層は超富裕層および標準的な富裕層たちの倍以上の速度で死亡。パンデミックは逃げ場を失いもがき苦しむ貧困層によってもたらされた。

しかし、彼らを非難することはできない。感染拡大防止、対策強化、ロックダウンのタイミングを逸した連邦政府の対応に問題があるのだから。所得格差、人種差別、不平等、無策の連邦政府、そしてリーダーシップの欠如、貧困層だけでなく、国民の多くが犠牲者と言っても過言ではない。

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ニューヨーク

アメリカの全州で実施されていたロックダウンは徐々に緩和・解除されつつある。トランプ大統領はロックダウンの期限を延長しないと記者団に説明したが、それの延長・緩和・解除の権限は各州知事に委ねられている。

ニューヨーク州のクオモ州知事は、「当然延長する、元の生活を取り戻すべく皆で協力しなければならない。ただし、一部地域では感染を緩和する”予定”である」と述べた。同国の心臓部”ニューヨーク市”が動き出すのは当分先の話になりそうである。なお、クオモ州知事の発言に対し、トランプ大統領は特に反応を示していない。

4月30日、ブルックリン区の路上付近に停められていたトラックから異臭がすると当局に通報が入った。中をチェックすると、50もの遺体が収容され一部腐敗を起こし、異臭を放っていた。同区に拠点を置く葬儀社が、「事務所の冷凍庫に保管できなくなった遺体」をトラック内の冷蔵室で保管していたものの、腐敗が進んでしまったという。

なお、発見された遺体が全てコロナウイルスによる犠牲者であるかは不明。今後調査が進められるものと思われる。ニューヨーク州の葬儀社は、膨大な死者の取り扱いに苦労している。

ジョンズ・ホプキンズ大学の調査によると、ニューヨーク州の死者は18,000人を突破。同国の感染者数は100万人を超えさらに増加し続けている。

5月2日、同国はコロナウイルス治療に一定の効果を期待できるとされる「レムデシビル(エボラ出血熱治療薬)」の緊急使用(FDA承認)を許可した。これにより、重度の患者に対し、抗ウイルス薬を使用できるようになった。

世界中の優秀な研究者たちがこの薬に注目し、その有効性をチェックしてきた。しかし、一部の専門家はそれを「銀の弾丸(シルバーバレット)」と見なすべきではない、と警告している。

レムデシビルを開発したギリアド・サイエンシズ社のダニエル・オディCEOは、緊急使用の許可は大きな前進であると述べた。しかし、FDAコミッショナーのステファン・ハーン氏は、「緊急使用許可を出した薬は、より高いレベルで精査した承認薬と同じではない」と釘を刺している。

ギリアド・サイエンシズ社のウェブサイトには、「レムデシビルはいかなる状態の治療であっても、その安全性、有効性を確立していない実験段階の薬である」と書かれている。また深刻な副作用の可能性についても触れている。

臨床試験を行った米国国立アレルギー感染症研究所(NIAID)は、この薬を投与した患者の回復までの日数が15日から11日に短縮されたと発表した。しかし、あくまで「回復の期間」を早めただけであり、「死亡を防いだ」ことについては言及しなかった。

レムデシビルの在庫には限りがあり、配布量、価格は明らかにされていない。

同日、ニューヨーク州の老人ホームで98人の大量死が報告された。遺体を調査したマンハッタンのイザベラ老人医学センターによると、46人が陽性、52人は感染の疑いがあるとのこと。

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