中小零細企業を救うために用意された第三弾存続法案

斬首されたマリー・アントワネット

壊滅的な経済破綻を食い止めるべく、議会は第三弾となる存続法案(コロナウイルス刺激法案)を可決。追加予算の4,800億ドル(約52兆円)は、第二弾の存続法案予算3,490億ドル(約38兆円)が底をついたために準備された。

中小零細企業向けに用意された第一弾存続法案の予算額は3,100億ドル(約34兆円)。第二弾、第三弾と次々に法案を成立させ、トランプ政権は本気で中小零細企業を救うべく行動しているように見える。当初、共和党は民主党との調整に手間取ったが、必要な予算はしっかり確保できたはずだった。

ニューヨークのアンドリュー・クオモ州知事は、第三弾の存続法案を「愚か、無責任、無謀、恥知らず」と批判した。さらに、ニューヨーク議会選挙区選出、共和党のピート・キング議員も声明を発表。共和党上院、院内総務の「ミッチ・マコーネル議員」を、フランス革命で斬首されたマリー・アントワネットに例え、非難した。

第三弾の存続法案には、民主党が求めていた資金難に陥っている州、地方自治体、インディアン部族への予算は一切含まれていなかった。マコーネル議員は法案について、「各州が求めているような予算は配分されないだろう。クオモ州知事たち民主党議員は、自分たちで責任を負うべきである」と述べた。

さらにマコーネル議員は「連邦政府は将来の世代に借金という責任を残し、現世代にお金を配分しようとしている。これまでに配分した存続法案の予算もしかり。私は将来の世代に借金を背負わせるような法案を支持できない」とラジオのインタビューで語った。

一部の共和党議員は存続法案に否定的な立場を取っていた。数兆ドルの追加支出は連邦政府の重荷でしかなく、国の財政不足を悪化させるだけであると述べ、これに対し民主党議員は嫌悪感を示していた。

院内総務のマコーネル議員の発言は、誠実な共和党議員の怒りを買った。ラジオインタビュー時の発言は、「破産する者・企業は自己責任。連邦政府は自己責任の肩代わりなどまっぴらごめんだ」とも解釈できる。

共和党のキング議員は、「コロナウイルスによる経済危機に対し、連邦政府は責任を負わねばならない。ロックダウンを指示したのだからなおさらである。必要な支援を行わず、弱者救済拒否とも解釈できるマコーネル議員の発言は恥ずべき、全く弁護できない。予算を必要とする者たちを捨て置く、お金の無駄という考えは、フランスの斬首された王族と同じだ」と述べた。

連邦政府と州の争い、いざこざは今に始まったことではない。中小零細企業への財政援助方法、ロックダウンの解除、ガイドラインの発表など、対立は日に日に激しさを増している。

ギャンブル

トランプ大統領は、ロックダウンの段階的な解除と経済活動再開に意欲を示しており、さらに、州知事の対応が遅すぎることを非難。各州に「従わせる」経済活動再開ガイドラインを発表した。また、過度なロックダウン措置を発令した州に対し、「行き過ぎである」とツイートした。

先週頃からロックダウンの解除を求めるデモ活動が全米各州で増加しつつある。これに対しトランプ大統領は、右派主導のデモ活動を支持すると正式に表明した。

ロックダウンが長引くほど、アメリカ経済は停滞、右肩下がりで減速する。トランプ大統領は経済活動の復活、強いアメリカの帰還を誰よりも切望している。理由は、半年後に行われる大統領選挙に勝利するためだ。今の状況が続く、回復が遅れるほど、共和党有権者の票を失うと考えているのだろう。

トランプ大統領の決断には大きなリスクが伴う。ロックダウンを解除しパンデミックが発生すれば、国民の命を危険にさらすだけでなく、経済活動に致命的なダメージを与えかねない。「決断・責任は州知事が負うべきである」と発言した以上、ロックダウンの段階的な解除は各州に任せるべきであろう。

トランプ大統領は一発勝負のロシアンルーレットに挑戦する狂人ギャンブラー、国民の命をかけて経済活動を再開する、では話にならないし、危険極まりない愚かな者と言わざるを得ない。感染者数、死者数が減少しつつあるドイツやニュージーランドは、ロックダウンの段階的な解除を決めた。しかし、あくまで「段階的」にである。

メルケル首相は、ロックダウンを段階的に解除したのち、僅かでも感染拡大の兆候が見られれば、措置を復活させると明言。ニュージーランドのアーダーン首相も同様である。アメリカの感染者数、死者数は世界でも群を抜いている。感染拡大率は多少緩やかになりつつあるが、一刻の余談も許さない状況にあることは変わりない。

24日時点、世界のコロナウイルス感染者数は260万人を突破、183,000人以上が死亡した。アメリカの感染者数は約840,000人、死亡者は46,700人以上。トランプ大統領はこの数字を見て何を思うのだろうか。

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