東京都市圏の人口は約3,800万人、しかし・・・

なぜ、日本のコロナウイルス感染者は増えず、死亡率は驚異的な低さを維持できているのか。専門家たちはその秘密を探るべく調査を行っており、「マナーの良さ」「優れた免疫力を持っている」などの理論を導きだした。が、いずれも信ぴょう性に欠けるものばかりである。

日本の死亡率は驚異的な低さを維持しているが、世界一というわけではない。アジア地域では韓国、台湾、香港、ベトナムが日本を上回る低罹患率および死亡率を維持し、コロナウイルス封じ込めに成功したと称賛されている。

6月時点における首都東京の年間死者数は、2019年より少ない。この状態を維持すれば、コロナウイルスの世界的流行が発生したにも関わらず、超巨大都市の2020年の累計死者数は昨年ベース以下を記録する可能性が極めて高い。

日本の国土には、アメリカ、ブラジル、イギリスなどと同じく、パンデミックを引き起こす条件が揃っている。さらに、2月のダイヤモンド・プリンセス寄港に伴うクラスター事件で露呈した「対策の脆弱さ」がプラスされ、「人口1億2,000万人の島国は大変なことになるだろう」と世界各国の専門家は予想した。

2月、中国武漢でパンデミックが発生し、世界は中国の旅行者をシャットアウトした。しかし、日本政府は同国への門戸を開き続けた。その後、ウイルスは欧州に広がり、高齢者に致命的な一撃を見舞うことが判明。さらに、感染力の高さが恐怖に拍車をかけ、世界は大混乱に陥った。

日本は長寿大国であり、総人口に対する高齢者(65歳以上)の割合は世界一である。つまり、コロナウイルスを放置すれば大変な事態を招く。さらに、ダイヤモンド・プリンセス寄港事件によって、感染は首都圏から全国にゆっくりと拡散した。

この時、多くの日本人が大規模なパンデミックを覚悟したに違いない。東京都市圏で生活する約3,800万人は、世界一と言われる超満員電車に乗車し職場に向かわねばならず、遅かれ早かれウイルスは都市圏全体に広がると予想された。

さらに、日本政府は世界保健機関(WHO)が推奨するPCR検査の体制拡充をほとんど進めず、体調に異変を感じた場合のみ受診したほしい、というスタンスを崩していない。6月末時点の国内におけるPCR検査総数はわずか348,000件。人口の0.27%しか検査を受けていないのである。

問題はまだある。日本は欧州レベルのロックダウンを実行しなかった。4月初旬、安倍政権は全国を対象とした緊急事態宣言を発出。しかし、あくまで自粛要請レベルであり、欧州やインドのような強制力はない。医療機関や生活必需品を提供する企業以外は閉鎖を求められたが、拒否に対する罰則はなかった。

ニュージーランドやベトナムは、国境の閉鎖、都市間のルート閉鎖、厳格なロックダウン、大規模なPCR検査、検疫などの措置を駆使し、コロナウイルスとの戦いを制した。

日本政府のやる気のなさに世界は驚愕し、第二次世界大戦の敗戦、滅亡から不死鳥の如く蘇った「黄金の国、ジパング」はコロナウイルスによって再び滅ぼされると誰もが思った。しかし、最初の感染者が確認されてから5か月、日本の累計感染者数は20,000人にも満たず、死亡者は1,000人未満である。4月に発出された非常事態宣言は過去のものとなり、プロ野球とJリーグが開幕。人々は悠々と日常生活に戻っている。

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黄金の国、ジパング?

携帯会社の大手ソフトバンクは、従業員40,000人に対する抗体検査を実施、コロナウイルスにさらされた者はわずか0.24%だった。また、東京都市圏の8,000人を対象に行われたテストでは、0,1%という驚異的な低さを記録した。

5月末に緊急事態宣言の完全解除を発表した安部首相は、感染予防対策の成果を、「国民の努力のたまもの」と表現し、第二波に備え準備を進めると述べた。

先月、麻生副総理兼財務大臣は、国会の場でコロナウイルス対策の秘訣を各国高官からしつこく質問された、と述べた。

麻生氏は、「各国の高官からワクチンを開発したのか?感染者数を捏造しているなどと指摘された。私はあなたの国と日本は民度が違う、と答えた。皆、電話の向こうで絶句していた」と語った。

民度とは、「人々のレベル」「人々の生活レベル」「文化レベル」などを意味する言葉である。つまり、相手に民度が低いと言えば、人種的優越と文化的優越を誇示し、不快な気持ちにさせる。この発言を巡り、麻生氏は国会で非難された。

日本の感染率および死亡率の低さを証明できる証拠は、現時点では見つかっていない。いくつかの慣習(挨拶はお辞儀のみで済ませ、ハグやキスはしないなど)が関連している、という意見も出ているが、いずれも決定打に欠けるものばかりである。

日本人は、1919年のスペイン風邪(インフルエンザ)大流行からマスク着用を開始した。国民は体調を崩さぬよう留意し、かつ、第三者や家族を守るための予防が必要と考えた。結果、マスクは生活に溶け込み、花粉症や風邪予防などで大活躍することになった。

京都大学の医学研究者であり、政府のクラスター抑制タスクフォースメンバーに任命された神代博士は、感染の3分の1以上が「類似した場所」で発生していることをデータから突き止めた。

神代博士はBBCの取材に対し、「大きな声で話したり歌を歌ったりする音楽会場などに感染者が集中していた。パンデミックおよびクラスターを防ぐためには、国民に対し、避けるべき場所を提示する必要があった」と述べた。

博士のチームは、「カラオケでの歌唱、パーティ会場やクラブなどでの会話、バーや居酒屋での向かい合っての会話、ジムでのエクササイズ」などを最も感染リスクの高い場所と特定した。

これらの発見により、政府は全国的な感染予防キャンペーンを開始。「三つの密」の回避を国民に呼びかけた。
1.換気の悪い「密」閉空間を避ける。
2.人が多い「密」集地帯を避ける。
3.不特定多数が会話する「密」接状態、場面を避ける。

厳格なロックダウンを行わず、外出禁止令を発出しなかった日本政府の成功モデルには、危険な要素が多数含まれている。しかし、日本人は安倍首相に指示されるまでもなく、マスクを着用し、手洗いうがいを励行した。「石橋を叩いて渡る」慎重な国民性の結果、と指摘する専門家もいるが、国民性だけで感染を防いだとしたら、凄いと言わざるを得ない。

既に述べた通り、東京首都圏は超人口密集地であり、一歩間違えれば数百名規模のクラスターが発生してもおかしくない。

7月3日、鹿児島県の県庁所在地である鹿児島市で大規模クラスターが発生。夜の繁華街を代表するショーパブで男女計40名ほどがコロナウイルスに感染した。

鹿児島県の三反園県知事は記者団に対し、「感染者が県内全域に拡大し、大変厳しい状況になった」と危機感を露わにした。

コロナウイルスとの戦いは始まったばかりである。日本政府および国民は「勝って兜の緒を締めよ」、一度勝利を手にしたからといって調子に乗らず、第二波発生に向け着々と準備を進めつつ、慎重に経済活動を再開させねばならない。感染予防対策を怠れば、アメリカやブラジルのような事態を招いてもおかしくない、と考えるべきだろう。

【感染状況まとめ/7月4日】

 累計感染者累計死者最新新規感染者
(7月3日)
日本19,068976196
東京都6523325124
鹿児島県74030
アメリカ285万人13.2万人57,209
ブラジル154万人63,25442,223

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