緊急事態宣言によりコロナウイルスを封じた北海道。しかし、第二波への対処には苦労している

2月下旬、北海道は日本で初めて緊急(非常)事態を宣言した。学校は閉鎖され、大規模な集会は軒並み中止。道知事は政府より早く行動し、確固たる決意でコロナウイルスの追跡を開始した。

北海道庁の発表した緊急事態宣言は、不要不急の外出自粛要請テレワークの要請など、あくまで「要請レベル」で展開された。しかし、庁が危機感を持って対応した結果、要請はしっかり機能し、3月中旬になると新規感染者数は1日に1~2件程度にまで減少。3月19日、緊急事態宣言は解除された。

先週、日本政府は首都東京、大阪などの1都1府5県に対し非常事態を宣言、コロナウイルスとの戦いに勝利した北海道庁は対象外だった。しかし、経済活動を再開させたことで、感染者数が再び増加に転じる。なお、2月に感染が確認された状況とは異なり、海外からウイルスが持ち込まれた可能性は低い。

先週北海道で確認された新規感染者は135人。いずれも外国人ではなく、渡航歴のない道民が感染していたという。コロナウイルスは北海道外から持ち込まれたのではなく、内部に潜み、第二波の発動タイミングをうかがっていた。

キングス・カレッジ・ロンドンの渋谷健二教授は、「クラスター対策、感染経路の追跡、隔離することは比較的簡単である」と述べ、「道庁はクラスターの初期段階で行動し、制御に成功した。また、当時日本国内でのコロナウイルス感染者数はごく僅かだった。感染者の増加が始まる前だったので、対策が効果的に機能したのだろう」と付け加えた。

検査体制不足

韓国のテグ広域市で発生した「宗教施設でのクラスター事案」と北海道が置かれた状況には類似性がある。韓国政府はクラスターの震源地となった施設を隔離、感染拡大を防止した。

テグ広域市でのクラスター発生後、韓国政府はコロナウイルス感染者を特定するために検査体制を拡充。ドライブスルー型の検査施設を設けるなどした。

これに対し日本政府は、検査体制を拡充していない。マンパワー不足など理由は様々だが、国内で感染が確認されてから3カ月たった今でも、PCR検査を行った件数は他国に比べ極端に少ない。

日本政府はリソース(時間、マンパワー、資材、機材など)の浪費になると考え、検査体制の大幅な拡充には否定的な立場をとってきた。しかし、今は体制の見直しを図りつつあり、検査数は徐々に増えているが、想定通りに事は運んでいないようだ。

厚生労働省は、検査体制が拡充され軽症患者が激増することを恐れている。東京都や大阪府などは、症状の出ていない患者、軽症患者に対し、民間のホテルなどでの療養を要請。厚生労働省の指示を受け、重傷患者向けの病床確保を優先させている。

この措置は医療設備の脆弱な地方都市でも必要となる。東京都や大阪府などの大都市は医療設備が比較的充実しているが、地方都市でクラスターが発生すれば、医療崩壊を招きかねない。さらに、クラスターの発生と検査体制の拡充不足は密接に関係している。

渋谷教授は「感染者数が減少し封じ込めに成功した、と思われる事態になっても、経済活動を再開し、人々の往来が激しくなれば、第二波の発生につながる。さらに検査体制が拡充されていなければ、感染者の特定も進まず、クラスターの発生自体に気づかない」と述べた。

ゴールへの道のり

北海道で発令された二度目の緊急事態宣言は、ゴールへの道のりが想像以上に長く険しいものであることを教えている。

日本政府が発表した緊急事態宣言は、他国のロックダウンに比べ、明らかに「緩い」。ほとんどの国民が仕事をしており、電車内での社会的距離の確保は困難。一部の地域では学校の閉鎖を継続しているが、飲食店や居酒屋、バーは変わらず営業している。

「今の体制を継続すれば、仮に一部の地域で感染者数が減少しても、北海道と同じ事態になる。一部の地域で封じ込めに成功しても、国内の他の地域で感染が進んでいる限り、非常(緊急)事態であることに変わりはない。自粛要請を解除し人々が移動を開始すれば、第二波が発生する」と渋谷教授は述べた。

観光都市北海道は、コロナウイルスの影響による観光客の減少に苦しめられている。観光産業への依存度が高い都市ほど苦しく厳しい状況であることは世界共通だ。飲食業や観光業を営む者たちは、一刻も早い事態の解決、そして経済活動の再開を望んでいる。

しかし、早急にことを進め、緊急事態を解除すれば、北海道の二の舞になるだろう。パンデミックが発生すれば、事態はさらに悪化する。既に述べた通り、医療設備の脆弱な地方都市であればなおさらだ。

16日、安倍首相は1都1府5県のみ対象だった緊急事態宣言を全国展開すると発表。期間は2020年5月6日まで。
世界の中心、ニューヨーク/コロナウィルスとの戦いは始まったばかり

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