ロックダウン再発出もあり得る

第二波」発生が懸念されるスペインでは、感染者の急増を抑えるための新しい対策が講じられている。

カタルーニャ州は、14日間の夜間外出自粛およびバーやナイトクラブの閉鎖を決定。ただし、同州以外のエリアでも感染が急増している。

イギリス政府はスペインから入国する全ての人(自国民含む)に対し、14日間の自己隔離を要請すると発表した。また、ノルウェーおよびフランスも同様の規則を発出予定である。

感染再拡大の深刻な国はスペインだけではない。フランスとドイツも、経済活動を元の水準に戻すべく他のEU諸国と共にロックダウン解除、国境を開放したが、新規感染者は増加傾向にある。

欧州での感染再拡大は、アメリカ、ブラジル、インド、南アフリカなどでの感染爆発に匹敵する世界全体の懸念事項である。

世界保健機関(WHO)は7月25日の記者会見で「影響を受けていない国はない。そして、アメリカ大陸と南アジアの人口過密地域で深刻な感染拡大が続いている。世界全体で見れば、第一波は勢力を拡大し続けていると言えるだろう」と警告した。

ジョンズ・ホプキンズ大学のまとめによると、7月25日時点の世界の累計感染者数は約1,580万件、64万人以上の死亡が確認されている。なお、同日1日当たりの新規感染者数は28万人を超えた。

約1カ月前、スペイン政府はロックダウン(緊急事態)の終了を発表した。しかし、バルセロナ、サラゴサ、首都マドリードなどで再び感染者が急増し、政府は「第二波の危機が差し迫っている。ガイドラインに従い感染予防対策を徹底してほしい」と警告し続けてきた。

カタルーニャ州政府は地域内の全ナイトクラブ、深夜営業のバーなどに2週間の閉鎖を命令。部分的なロックダウンの再発出に、ようやく営業を再開できた飲食業界関係者は戦々恐々としている。

同州保健当局は、7月24日だけで900件以上の新規ケースを報告。また同日、サッカースペイン1部リーグに所属するCFフエンラブラダでクラスターが発生し、28人が陽性と診断された。

疫学者のダニエル・ロペス・アクナ博士はBBCの取材に対し、「夜の街に繰り出した若者たちが媒体になっている。若者たちはコロナウイルスを自宅に持ち帰る。結果、家族、高齢者層が感染する」と述べた。

スペインでの感染拡大を受け、他の欧州諸国も感染予防対策の再開に踏み切らざるを得なくなった。

イギリス政府はスペインから到着した全ての人に14日間の自己隔離を要請すると発表。これにはカナリア諸島とバレアレス諸島も含まれる。政府は国民に対し、「スペインへの移動は、必要不可欠なものを除き極力自粛してほしい」と呼び掛けている。

ノルウェーでもスペインから到着した人々に対し検疫を求める予定である。

フランス政府は国民に対し、カタルーニャ州への旅行を控えるよう警告した。

ベルギー政府は、アラゴン州ウエスカおよびカタルーニャ州リェイダへの移動を禁止。また、その他のエリアについても移動(入国)を避けるよう指示した。

スペイン外務省のスポークスマンは記者団に対し、「国内での感染拡大は局所的であり、エリアの封鎖によって感染状況はコントロールできている」と強調した。

スペイン、コロナウイルス規制を拡大、第二波迫る

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怯えるEU諸国

3月、欧州はコロナウイルスの震源地になった。しかし、各国がロックダウンを発出し、人の往来や店舗の営業を禁じたことで、ようやく感染を収束させることに成功した。

各国政府および国民は、経済活動再開と第二波を同時に防ぎたいと考えているが、現実は厳しい。

ベルギーでは、感染者数が急増したことで、自主的に営業を取りやめる店舗も出てきた。ある商店の担当者はBBCの取材に対し、「できれば顧客を招き入れたい。しかし、もしクラスターを発生させるようなことになれば、これまでの努力が水の泡になってしまう。長期間の営業禁止命令、風評被害は避けたい」と述べた。

欧州最初のホットスポットになったイタリアでも感染者が急増し、政府は対応に追われた。現在、ルーマニアとブルガリアから入国する人々に対し、14日間の検疫(自己隔離)を指示している。

フランスのジャン・カステックス首相は、コロナウイルスが広く蔓延している欧州16ヵ国から到着した人々は、その場でPCR検査を受けることになると述べた。なお、同国内での感染者もジワジワと増加中。保健当局は24時間当たりの新規感染者が1,000人を超えたと発表した。

ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、感染リスクの高い国から入国する人々に対し、PCR検査義務化もあり得ると示唆した。

WHOは感染を一定レベルまで抑えた欧州で再びパンデミックが発生すれば、世界の感染拡大の勢いがさらに増すと懸念を表明した。

現在も最も危険視されている国はインドである。累計感染者数は134万人を超え、ここ2日間で10万件以上の新規ケースが報告された。同国の専門家は、「厳格なロックダウンがもたらした感染抑制は、解除によって消滅した。最悪の状況は数カ月続くと予想される。この国の人口と人口密度、過密地域を考慮すると、24時間当たりの新規ケースが10万件を軽く超えることもあり得る」と警告した。

感染拡大の続くマディヤ・プラデーシュ州では、首相のシブラジ・シン・チョウハン氏もコロナウイルスに感染。国民に対し、「警戒を怠らず、感染予防対策を徹底してほしい」と呼び掛けた。

【その他の国々】

●ブラジルのジェイル・ボルソナロ大統領は、7月25日にPCR検査を受け、陰性と判定された。この結果を受け大統領は、コロナウイルス治療への効果を証明されていないヒドロキシクロロキン(抗マラリア薬)を称賛し、「私はクロロキンを服用し続けている。この薬こそ、ウイルスを屈服させるワクチンだ」と述べた。同日、リオデジャネイロで毎年開催される大晦日のイベント、「copacabana reveillon 2021」の中止が決定した。

●ベトナムでは約3カ月振りの市中感染が確認された。発生場所は中部ダナン。これに伴い、政府は警戒態勢を再開すると発表した。

●WHOは、パンデミックが始まって以来、アフリカで医療活動に従事する関係者約10,000人がコロナウイルスに感染したと発表した。

●香港、1日当たりの感染者数が過去最高を更新。

●韓国、入国者の陽性率が高く、感染状況は2月末の水準に達した。

●日本、7月23日の新規感染者数が過去最高を更新。5月の緊急事態宣言発出前の水準を超え、ウイルスは首都東京だけでなく広範囲に広がっている。

【各国の感染状況/7月25日】

累計感染者累計死者新規感染者
(7月24日)
世界1,580万人64.1万人284,191人
アメリカ419万人14.8万人74,360人
ブラジル235万人85,385人55,891人
インド134万人31,358人49,310人
南ア43.4万人6,655人13,944人
スペイン27.2万人28,432人2,255人
フランス18.1万人30,192人1,130人
ドイツ20.6万人9,201人815人
ベトナム417人0人4人
香港2,506人18人123人
韓国14,092人266人113人
日本29,053人993人927人

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