2つの地区がロックダウンを再開

州当局は、ノルトライン・ヴェストファーレン州でコロナウイルス感染者が急増したことを受け、2つの地区でロックダウン措置を再開した。

アルミン・ラシェット州知事は、少なくとも6月30日までギュータースロー地区およびヴァレンドルフ地区は封鎖されると述べた。

同州の保健相を務めるカール・ジョセフ・ローマン氏は、「大規模なクラスターが発生したため、再び規制を設け、住民の命を守らなければならない」と説明した。

ドイツ政府は、パンデミックに伴い発出したロックダウンを5月に解除。今回は地区レベルの規制だが、国内でロックダウンが再導入されたのは初めてである。なお、同州当局はアンゲラ・メルケル首相に対し、厳しいロックダウン規制を緩和するよう幾度となく要請していた。

23日、ラシェット州知事はギュータースロー地区南西部にある「トニーズ」のミートパッキング工場で発生した集団感染は、「国内最大のクラスター」と説明した。その数時間後、ローマン保健相は隣接するヴァレンドルフ地区にもロックダウンを課すと発表した。

2つの地区では、バー、美術館、映画館、ジムなどは全て閉鎖され、レストランもテイクアウト品以外提供できなくなる。また、厳格な社会的距離のルールも復活した。

ギュータースロー地区の学校および保育園は既に閉鎖されており、ヴァレンドルフ地区も25日から休校に入る予定である。

ホットスポットになったミートパッキング工場の従業員に対しては、強制検疫が実施されている。現在、同州の警察チームが現地に配備され、PCR検査場への誘導対応などに当たっている。

また当局は、トニーズのスタッフが居住する社宅の周りに金属フェンスを設置、7,000人以上と言われる移民労働者への食料配給を開始した。なお、職場の状況等を説明するために、翻訳者も配備されたという。

全土に課されたロックダウンが解除されて以降も、各地で小規模な感染は続いていた。中部の都市、ゲッティンゲンでは、一部地域が当局の検疫下に置かれ、移動者に対する注意喚起が継続されている。

ドイツの公衆衛生機関、ロバートコッホ研究所(RKI)の責任者を務めるローサ―・ワイラー氏は記者団に対し、「第二波のリスクは十分承知している。我々はウイルスをコントロールできる」と述べた。

ひとりの感染者が平均して何人にコロナウイルスを拡散(感染)させたかを示す繁殖率(R数)は、1.00未満に抑えることで、感染率を引き下げると言われている。現在、ドイツのR数は2.76まで上昇、狭いエリアの中でクラスターが発生し、数値を押し上げた。

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肉男爵ウイルス

食肉加工会社トニーズの「クレメンス・トニーズ氏」は、工場内におけるクラスターの発生を陳謝したうえで、「会社は危機的状況に置かれた」とコメントした。

同氏はドイツの食肉生産を支えるマーケットリーダーである。ギュータースロー地区のミートパッキング工場では約7,000人の従業員が働いている。今回のクラスター発生に伴い、同工場内だけで1,500人以上の従業員がコロナウイルスに感染。陰性と判断された者も厳格な検疫下に置かれた。

同社はクレメンス氏の兄、ベルント氏によって1971年に家族経営会社として設立された。当時、クレメンス氏は15歳だった。

その後、同社はヨーロッパ最大規模の食肉生産者になった。ドイツ工場とデンマーク工場で約16,500人の従業員が働いており、商品の50%を国外に輸出している。

ギュータースロー地区近郊のレーダ・ヴィーデンブリュックの屠殺場では、毎日約2万頭の豚を解体処理している。しかし、クラスターの発生によって屠殺場も稼働を停止、行き場を失った豚と畜産業界にも深刻な影響が出る、と懸念されている。

ミートパッキング工場で働く従業員のほとんどは東ヨーロッパ(ルーマニア人、ブルガリア人、ポーランド人、北マケドニア人など)出身者で構成されている。

ギュータースロー地区で活動するインジ・バルトシュナイダー氏はBBCの取材に対し、「多くの移民労働者が老朽化した過密状態の社宅で生活している。彼らの生活水準を向上させることが大切だ」と述べた。

クラスターは過密状態の工場内で発生したと疑われている。トニーズだけでなく、他の食肉加工場でも従業員たちは狭いエリアに密集し仕事を行わねばならない。また、密閉された工場内は冷凍保存機器等の影響で空気が冷たく、コロナウイルスの感染拡大に適した環境、と指摘された。

クレメンス氏は、ブンデスリーガで活躍するシャルケ04の監督委員会代表を務めている。しかし、不適切な発言により代表職から3か月間離れることになった。

同氏はパーティの場で、「アフリカにドイツの発電所を建設すべきである。そうすれば、アフリカ人は木を切らなり、環境保護に貢献できる。さらに、暗くなればベッドに入るという習慣も薄れ、ボコボコ赤ちゃんを産むこともなくなるだろう」と述べ、批判された。

同氏は食肉加工業だけでなく、ロシアの国営エネルギー企業最大手”ガスプロム”との取引などに力を入れており、プーチン大統領にトニーズの肉料理をプレゼントしたこともあるほど親密な関係を構築している。

ドイツ国民は、トニーズのいい加減なウイルス対策を批判、皮肉を込めて「肉男爵ウイルス」と呼ぶようになった。

ジョンズ・ホプキンズ大学の調査によると、23日時点のドイツの累計感染者数は約193,000人、これまでに8,986人の死亡が確認された。

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