イギリスで開催された2つのスポーツイベントが極大パンデミックを引き起こした

イギリスでコロナウイルスの感染経路および追跡を行っているプロジェクトチームの科学者はBBCの取材に対し、「3月に開催された2つの主要スポーツイベントが、苦しみと死を爆発的に増加させた」と述べた。

毎年恒例の競馬フェスティバル「チェルトナム・フェスティバル」と、UEFAチャンピオンズリーグ「リバプールvsアトレティコ・マドリード」に関係する何百万人もの人々(観客・ボランティア・大会関係者など)から採取された検体によって、2つのイベントがホットスポットだと判明した。

ティム・スペクター教授は、これらのイベントが開催された結果、感染者は数倍に増加したと述べた。これに対し政府は、多くの要因が特定地域の感染拡大につながった可能性がある、という見解を示した。

3か月ほど前まで、同国内ではコロナウイルスの脅威が迫っているにも関わらず、様々なスポーツイベントが通常通り開催されていた。なお、同国以外の欧州諸国は、2月末頃から無観客での開催に切り替えるなど、必要最低限の予防措置はとっていた。

当時ボリス・ジョンソン首相は「できる限り通常通りイベントを開催するべき」と宣言している。結果、3月最初の週末には、プレミアリーグ他の全試合、5つの競馬イベントおよびレース、そして首相自身も出席したラグビーの大会が予定通り開催された。

ただし、感染が広まりつつあったイタリアでの試合、中国に関連するスポーツイベントは軒並み延期された。そして、チェルトナム・フェスティバル(3月10日)に集まった25万人の観客が大いに盛り上げる前日、文化省のオリバー・ダウデン長官は「屋外集会禁止を求める」市民の意見を拒否した。

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コロナウイルスを過小評価した結果が今である

アイルランドのジャーナリスト、メラニー・フィン氏は、首都ダブリンからチェルトナム・フェスティバルの会場に向かった。この時、アイルランドと同イベント会場(競馬場)の”違い”に驚いたという。

「この時点でアイルランド国民は、聖パトリックの祝日(3月17日)を全てキャンセルしていた。私たちは政府の要請にショックを受け、これから何が始まるのかと恐怖した。政府はコロナウイルスの感染拡大を防止するために手を打ったのである。そして、ダブリン空港はまるでゴーストタウンのようだった」

メラニー氏は、チェルトナム・フェスティバルもイギリス政府によって中止されると思っていた。しかし、結果は既に述べた通りである。同氏は、「人々は一カ所に密集し、まだそこまで重要視されていなかった社会的距離を無視した。ウイルスが広まっていることは既に報道されていたため、人々は最後の晩餐、神に祈るような感覚でパーティを楽しんだのかもしれない」と述べた。

25万人の観客に圧倒された同氏は身の危険を感じ、雇い主に途中退去を求めた。しかし、それから1週間後にコロナウイルスへの感染が判明、仕事を2週間休むことになった。

英国ジョッキークラブは、チェルトナム・フェスティバルが各種対策と明確なガイダンスに従って正しく行われたと、主催者の英国王室を擁護した。

3月11日、同意イベントの2日目に世界保健機関(WHO)は、世界的な大流行「パンデミック」を宣言した。

同日夜、リバプールFCは本拠地アンフィールドにアトレティコ・マドリードを招き、UEFAチャンピオンズリーグの準々決勝進出をかけた1戦に臨んだ。なお、首都マドリードでは既にパンデミックが発生していたものの、封鎖措置等はとられていなかった。

約3,000人のマドリードサポーターがスペインからアンフィールドに繰り出し、バーやレストランで楽しい夜を過ごした。

リバプールの熱狂的なサポーターであるジョエル・ルックウッド氏は、コロナウイルスに感染し約8週間入院した。同氏は、アトレティコ・マドリードとの1戦が原因でウイルスに感染したとは思いもしなかった、と述べた。

「サポーターたちは素晴らしい試合に興奮し、抱き合い、酒を酌み交わした。アトレティコサポーターも同じようにはしゃぎ、抱き合っていた」

リバプールFCのサポーターグループ、スピリット・オブ・シャンクリーは、同試合の2日前に首都マドリードからアトレティコファンが訪れることを問題視。プレミアリーグに意見を述べたが、政府の方針に従い、試合は予定通り開催された。

ティム・スペクター教授は、「スポーツイベントは少なくとも1週間前に中止すべきだった。コロナウイルスを過小評価した結果、パンデミックが発生し、数万人が命を落とした」と述べた。

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