2019/2020年シーズンが中止されると、約10億ポンド(1,350億円)が失われる

 世界最強にして最高のサッカーリーグ、「プレミアリーグ」が岐路に立たされている。現在2019/2020年シーズンは無期限中断を余儀なくされており、再開できる見通しは全く立っていない。

 プレミアリーグのCEO(最高経営責任者)を務めるリチャード・マスターズ氏は、コロナウイルス感染拡大の影響が「あまりに大きく、そして厳しい」と述べ、巨額の損失が発生すると警告した。

 FA(イングランドサッカー協会)のCEO、グレッグ・クラーク氏も同様の認識である。「現状を打破できなければ、多くのクラブが存続の危機を迎えるだろう」と述べた。

 プレミアリーグは選手の給与を30%カットする旨の提案を行い、現在各クラブで賃金交渉が行われている最中だ。

 コロナウイルス感染拡大におけるイギリス政府の経済支援策は、国民の生活に欠かせない企業、中小企業、個人、そして医療体制の拡充などに使われる。他の欧州各国、アメリカ、日本なども同様である。残念なことに、スポーツ業界(個人を除く)への支援は検討されておらず、現状では、この危機を自力で乗り越えねばならない。

 欧州サッカーが直面している厳しい現実は、リーグの中断/中止期間が長くなるほど深刻になる。マスターズ氏は、「チケット収入、放映権収入、スポンサー料、パートナー料が落ち込めば、小さなクラブから淘汰されていくだろう」と述べた。

 また、プレミアリーグを継続するためには、選手、スタッフ、ファン、クラブ、オーナー、あらゆる利害関係者が痛みを共有せねばならず、それを怠れば致命的な事態を招きかねないと述べ、同様の提案をFAの会議内で提案したという。

 試合を開催できなければ、チケット収入、広告収入、試合時に販売するクラブグッズの収入が滞る。そして、中断期間が長くなるほど、各チームの資金繰りは苦しくなる。各クラブのオーナーやマネジャーなどは、自身の給与カットも行っているが、焼け石に水であろう。

 政府はプロスポーツの再開より、国民の命、コロナウイルスの感染防止対策、そして企業への支援を優先する。これは全世界共通の考え(違う国もあるかもしれないが)であり、国民の大半は納得・指示するだろう。

 プレミアリーグの市場規模は約7,000億円。これほど巨大なマーケットでも、シーズンの中断/中止にとてつもない危機感を持っている。市場規模が大きくなるほど選手の年俸も高騰する、結果、試合を行えなかった時に大ダメージを受ける、と欧州サッカー関係者は言う。

 一部のメガクラブ(リバプール、マンチェスターシティ、ユナイテッド、チェルシーなど)は、多少収益が落ちても存続の危機に陥る可能性は低い。しかし、チケット収入やグッズ収入が貴重な財源になっているクラブは違う。

 プレミアリーグの下位リーグ、EFLチャンピオンシップなどに所属するクラブが受けるダメージはさらに深刻である。財政基盤の脆弱なクラブが次々に破綻、マスターズ氏の想定する最悪の事態も覚悟しなければならない。

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