◎モスクワ検察庁はアレクセイ・ナワルニー氏の地方事務所と反汚職財団(FBK)を過激派グループに指定するよう裁判所に請願した。過激派グループに指定された組織の関係者と支持者は長期刑に直面する。
2021年4月29日/ロシア、首都モスクワのバブスキンスキー地方裁判所が公開したアレクセイ・ナワルニー氏の写真((Babuskinsky District Court Press Service/AP通信)

4月29日、投獄されたロシアの野党指導者、アレクセイ・ナワルニー氏の事務所は、まもなく過激派グループに指定されることを受け、関連団体の事務所を解散すると発表した。

この日、ナワルニー氏はビデオリンクを介して裁判所に出廷するよう命じられていたため、数週間ぶりに公の場に姿を見せた。同氏は約3週間のハンガーストライキで体調を崩し窮地に立たされたが、独裁者ウラジーミル・プーチン大統領に対する攻撃的な姿勢に変化は見られなかった。

ナワルニー氏は判事に、「プーチンは権力にしがみつくことしか考えていない」と述べた。「独裁者はロシアを永遠に支配しようとしています...プーチンは裸の王様であり、人を殺し、ロシアの未来を奪いました。市民は奴隷のように扱われています」

ナワルニー氏は第二次世界大戦時の親クレムリン派の将軍の名誉を棄損した罪で有罪判決を受け控訴していたが、判事は訴えを却下した。

ナワルニー氏の団体は今月、大きな課題に直面した。モスクワ検察庁はナワルニー氏の地方事務所と反汚職財団(FBK)を過激派グループに指定するよう裁判所に請願した。過激派グループに指定された組織の関係者と支持者は長期刑に直面する。

チームナワルニーの地域事務所を運営しているレオニード・ボルコフ氏は4月29日の声明で、「関係者と支持者を保護するために、事務所を解散する」と述べた。「私たちはまもなく過激派に指定されます。ナワルニー氏のネットワークを維持することは不可能になりました」

団体はナワルニー氏が大統領選挙への挑戦を表明する前に設立された。しかし、ナワルニー氏は選挙への出馬を禁じられている。

モスクワ検察庁は24日、ナワルニー氏の事務所に活動を停止するよう命じた。裁判所はまもなく団体を過激派グループに指定すると伝えられている。

2021年4月28日/ロシア、サンクトペテルブルク、壁面に描かれたアレクセイ・ナワルニー氏のイラスト(AP通信/Ivan Petrov)

地域事務所のボルコフ氏は現地メディアの取材に対し、「この決定はロシアの政治組織を破壊します」と語った。同氏は刑事告発に直面しているため、海外に身を隠している。「野党グループはロシアで活動できなくなりました。過激主義法に違反した者は懲役10年の実刑判決を受ける可能性があります」

ロシアは2017年に宗教団体「エホバの証人」を過激派グループに指定し、以来、500人近くの信者が刑事訴追に直面している。ロシアの裁判所はプーチン大統領の指示通りに判決を下すため、検察庁の請願は必ず承認される。

そのため、ロシア全土で活動しているチームナワルニーの関係者は事務所を閉鎖し、ソーシャルメディアアカウントとチャット履歴を全て削除した。

サンクトペテルブルクの事務所周辺にはナワルニー氏の支持者が連日列を作っていたが、地元メディアによると、事務所はもぬけの殻になり、支持者もいなくなったという。

サンクトペテルブルクの事務所を運営していたイリーナ・ファティアノバ氏は過激派グループに指定されることを見越して、団体との関係を表面上は断ち切ったと強調した。同氏によると、ナワルニー氏が今年1月に帰国して以来、当局の圧力は着実に高まっていたという。「1月以来、警察が事務所に踏み込んでくるかもしれないと毎日心配していました。私は追跡され、拘留され、家宅捜索を受けました」

ファティアノバ氏は過激派グループの指定を悲劇と呼んだうえで、チームナワルニーの一員としてではなく個人で地方選挙に立候補することを計画していると述べた。「当局の取り締まりは恐ろしいですが、国民全員が言いなりになればロシアは終わりです。次の世代を絶望させたくありません」

チームナワルニーは、ナワルニー氏のカリスマ的なリーダーシップと全国の活動家を支援するシステムを導入することで、全国規模の団体に成長した。団体はソーシャルメディアで連絡を取り合い、数万人規模の抗議活動を開催し、メディアや関係組織の力を借りてクレムリンの腐敗を調査した。

地元メディアによると、サンクトペテルブルクの壁に描かれたナワルニー氏のイラストは警察が現地を確認してからわずか4時間後に塗りつぶされ、消滅したという。

しかし、反汚職財団(FBK)の責任者、イヴァン・ジダーノフ氏はAP通信の取材に対し、「組織は活動を継続する」と誓約した。

そして地域事務所のボルコフ氏も「チームナワルニーは諦めず、地方事務所は独立した政治団体として活動し続ける」と保証した。「団体は活動できなくなりましたが、私たちの後ろには数十人の強力でタフな地方の政治家と数万人の支持者がいます。私たちはこれまでの活動で得たノウハウを活かし、民主的な選挙キャンペーンを展開し、集会を開催し、新たな政治組織を作り、独裁者を打倒すると約束します」

2021年4月29日/ロシア、サンクトペテルブルク、壁面に描かれたアレクセイ・ナワルニー氏のイラストを消す労働者(ロイター通信)
アフィリエイト広告
スポンサーリンク