▽米国はエイズ救済大統領緊急計画(PEPFAR)を通じて南アのHIVプログラムに資金を提供しており、昨年は約4億4000万ドルを援助した。
トランプ(Donald Trump)米大統領は7日、南アフリカに対する援助を凍結する大統領令に署名した。
大統領令は南アのラマポーザ(Cyril Ramaphosa)大統領が先月署名した土地収用法に言及。それを「市民の権利を無視するもの」と非難し、少数派の土地を没収するものとしている。
南ア出身で米政府効率化省(DOGE)を率いるマスク(Elon Musk)氏もラマポーザ政権が白人を不当に扱い、「人種差別的な法律を公布した」と繰り返し非難してきた。
土地収用法は公共事業など、公益性の高い事業のために土地の所有者から土地を収用することを認めるもので、話し合いで合意が得られた場合には任意の売買契約を締結する。しかし、補償金額などの条件面で折り合いがつかず、事業の進行が滞る場合には土地の収用を可能とする。
トランプ氏は大統領令の中で、「この法律は機会均等を崩壊させることを意図した無数の政策や、人種的に不利な土地所有者に対する暴力を駆り立てた”憎悪に満ちた暴言”や政府の行動に続くものだ」と述べている。
またトランプ氏は「南アフリカは国際司法裁判所(ICJ)でイスラエルを大量虐殺者呼ばわりしたり、イランとの関係を強化するなど、米国やその同盟国に対して”攻撃的な立場”をとっている」とした。
さらに「米国は南アフリカ政府による自国内での権利侵害行為や米国の外交政策を台無しにする行為を支持することはできず、それはわが国、同盟国、アフリカのパートナー、そしてわが国に国家安全保障上の脅威をもたらすものである」とした。
大統領令は「政府主導の人種差別から逃れているアフリカーナー(17世紀に南ア・ケープ植民地に入植したオランダ系白人)の再定住を促進する」とした。
トランプ氏とラマポーザ氏は3日以来、この法律をめぐって舌戦を繰り広げている。トランプ氏はラマポーザ政権が白人の土地を没収し、特定の階級の人々を虐待していると非難した。
こうした中、ルビオ(Marco Rubio)米国務長官は5日、南アで今月開催されるG20外相を欠席すると発表した。
南アは25年11月までG20議長国を務める。外相会合は2月20~21日にヨハネスブルグで開催される予定だ。
米国はエイズ救済大統領緊急計画(PEPFAR)を通じて南アのHIVプログラムに資金を提供しており、昨年は約4億4000万ドルを援助した。
南アのHIV感染者数は800万人以上と世界で最も多く、約550万人が抗ウイルス薬を服用している。