◎イスラエル軍はHTSを含む反体制派に旧アサド政権の武器、兵器、生物化学兵器などが渡ることを阻止するため、複数の施設を空爆したとみられる。
2024年12月6日/シリア、北部アレッポ県、タハリール・アルシャーム機構(HTS)の戦闘員(AP通信)

イスラエル軍が9日、シリア全土で大規模な空爆を行い、首都ダマスカスを含む3つの主要空港やその他軍事インフラを標的とした。

タハリール・アルシャーム機構(HTS)とその同盟組織は先月末、アサド(Bashar Assad)大統領の支配下にある北部アレッポ県に攻め込み、全土を制圧。HTSはその後、中部の要衝ハマに侵攻。第3の都市ホムスも奪取した。

HTSは7日、ダマスカスを制圧し、アサド政権の終焉と「復讐のない新時代」の始まりを宣言。さらにHTS司令部は8日、アサド氏が国を去ったと発表。「独裁政権から解放された」と宣言した。

旧アサド政権は9日、アル・バシル(Mohammed al-Bashir)氏率いる野党主導の暫定政府に権力を移譲することに同意した。

HTSは内戦下のシリアで活動する反政府組織のひとつ。「国際テロ組織アルカイダ」のシリア支部とみなされ、北西部イドリブ県に本部がある。

軍事アナリストたちはHTSの指導者であるジャウラニ(Abu Mohammad Al-Julani)氏が暫定政府を率いる可能性は低いと指摘していた。

ジャウラニ氏はイラクで2003年に発足したアルカイダの支部「イラクのアルカイダ(AQI)」。2012年のシリア・アルカイダ支部「ヌスラ戦線」が発足した際の中心人物である。

イスラエル軍はHTSを含む反体制派に旧アサド政権の武器、兵器、生物化学兵器などが渡ることを阻止するため、複数の施設を空爆したとみられる。

イギリスのNGOシリア人権監視団などによると、シリア南西部ダラアに対するイスラエル軍の空爆により、民間人少なくとも2人が死亡したという。

標的は旧政権の施設とみられるが、詳細は不明だ。

イスラエルの地元紙ハーレツは政府関係者の話しとして、「イスラエル軍は8日から9日にかけてシリアの250以上の標的を空爆。これはシリアにおける歴史上最大の攻撃作戦であった」と伝えている。

イスラエル政府は公式声明を出していない。

イスラエルのネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相は8日、旧政権の崩壊を受け、ゴラン高原の緩衝地帯を制圧したと明らかにした。

カタール、イラク、サウジアラビアはゴラン高原におけるイスラエル軍の動きを非難。「1967年の第三次中東戦争を終結させた1974年の停戦協定に違反している」と述べた。

イスラエルは第三次中東戦争でゴラン高原をシリアから奪い取り、合わせてガザ地区、シナイ半島、ヨルダン川西岸地区、東エルサレムを占領した。

ゴラン高原はイスラエルの人気観光地であり、ホテルやレストランが立ち並び、ほとんどの住民はヘブライ語を流暢に話す。住民とイスラエル当局が衝突することはほとんどない。

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