ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
ハイチ、首都ポルトープランス、武装ギャング「G9&Family」のリーダー(Matias Delacroix/AP通信)

国連安全保障理事会が18日、ギャングの暴力に直面する中米ハイチへの武器禁輸措置を拡大した。

安保理は禁輸の対象を「あらゆる種類の武器・弾薬」に拡大することを全会一致で承認。政府、国家警察、国連ミッションは対象外である。

また安保理はブラックリストに載っているギャングメンバーや犯罪者の渡航禁止と資産凍結を拡大することも全会一致で承認した。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは1年半ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。

ポルトープランスの80%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

現地メディアによると、安保理が武器禁輸を導入した後も、ハイチへの武器流入は止まらず、その多くがギャングの手に渡っているという。

その結果、殺人、強盗、レイプ、誘拐が激増。重武装の自警団とギャングの戦闘が各地で多発するようになった。

AP通信によると、ハイチに流入する違法な銃器・弾薬の最大の供給源は米国。民間の武器商人やディーラーが関与しているという。

ギャングはポルトープランスの一部の港も支配下に置いており、その多くを船で輸入しているとみられる。

中部アルティボニット県では今月初め、地元で「グラン・グリフ」と呼ばれているギャングが複数の地区を襲撃し、市民少なくとも115人を虐殺した。逮捕者は出ていない。

国連の推計よると、今年1~5月までに全土で殺害された市民は3200人以上。この1年半で50万人以上が住居を失ったという。4~6月末の間に死傷した市民は約1400人。428人が誘拐され、行方不明になっている。

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