ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
2024年10月6日/ハイチ、首都ポルトープランス郊外の避難所(AP通信)

国連の国際移住機関(IOM)は6日、ハイチ中部アルティボニット県で今週発生したギャングによる襲撃事件で少なくとも70人が死亡、6300人近くが家を追われたと明らかにした。

それによると、避難者の9割が親戚の家に身を寄せ、残りは近くの学校や公民館などに避難しているという。

襲撃は3日、アルティボニット県の複数の地域でほぼ同時に発生したとみられ、通りには遺体が放置されていた。

AP通信は目撃者の話しとして、「フェイスマスクをつけた武装兵が市内を巡回し、ライバルギャングの戦闘員を次々に射殺した」と伝えていた。

それによると、ギャングの構成員は多くの民家に押し入り、家財を盗んだり、火を放ったりしたという。

首都ポルトープランス郊外の避難所に逃げ込んだ女性はAPの取材に対し、「ギャングはあっという間に町を制圧し、子供と一緒に逃げることしかできなかった」と語った。

報道によると、複数の地区で遺体が見つかり、これまでに70人の死亡が確認されたという。その一部はバラバラに切り刻まれ、黒焦げになっていた。

自治体は当初、殺害された人の数を20人と報告していたが、その後の調査でさらに多くの遺体が見つかったとしている。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は4日の声明で、「アルティボニット県でもギャングが市民を虐殺している」と非難した。

それによると、犠牲者の中には若い母親と乳児、助産婦も含まれていたという。

ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。

ポルトープランスでは1年半ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。

ポルトープランスの80%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。

暫定政権を率いるコニーユ(Garry Conille)首相は4日、「この虐殺に関与した者を一人残らず逮捕し、裁判にかける」と約束した。

国連安全保障理事会は先週、ハイチPKOの任務期間を1年間延長。ハイチ政府はこのミッションを現在の安全保障支援から国連の委任統治下に置かれる平和維持ミッションに格上げしてほしいと訴えていたが、安保理はこの要請を退けた。

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