◎メキシコはシリアやアフガンなどの紛争地を除いて、世界で最も危険な国のひとつであり、麻薬戦争の犠牲者は35万~40万人、それに巻き込まれて行方不明になった人は10万人以上と推定されている。
メキシコのサラザール(Ken Salazar)駐米大使は21日、オブラドール(Andrés Manuel López Obrador)大統領が北西部シナロア州クリアカンにおける麻薬カルテルの派閥間抗争が激化して原因は米国にあるという主張を否定した。
クリアカンでは今月9日頃から世界最大の麻薬組織シナロア・カルテルによる派閥間抗争が激化。陸軍兵士を含む30人以上が死亡している。
シナロア州では7月下旬に同カルテルの幹部2人が逮捕、米国に送還されたことを受け、派閥間の争いが激化。このうち1人は麻薬王「エル・チャポ」ことグスマン(Joaquin Guzman)受刑者の息子である。
同カルテル内では現在、グスマンの息子に忠誠を誓う勢力と、同じく7月に逮捕された幹部に忠誠を誓う勢力による権力争いが起きているとみられる。
サラザール氏は21日の記者会見で、「米国がシナロア州の各地で起きている大虐殺の責任を負うなど考えられず、理解できない」と述べた。
またサラザール氏は、「なぜオブラドール氏はそのような主張をしたのか、まったく理解できない」と批判した。
米当局は幹部2人を逮捕した経緯を明らかにしていないが、メキシコ当局と連携して捜査に当たったとしている。この逮捕が抗争につながることはある程度予想されていた。
オブラドール氏は今週、米当局が幹部2人を逮捕したため、「クリアカンが戦場になってしまった」と主張していた。
政府はこの地域に数千人の治安要員(陸軍兵士、州兵、警察官)を派遣している。
クリアカン市内では箱に詰め込まれたバラバラ遺体、頭部のない遺体、磔にされた遺体などが見つかっている。現地メディアによると、その多くにシナロア・カルテルのシンボルが切り刻まれていたという。