◎ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。
国連のハイチ担当であるオニール(William O'Neill)氏は20日、同国の国連PKOミッションの資金・人員不足が解消せず、ギャングの暴力が全土に広がっていると警告した。
オニール氏は今週、首都ポルトープランスを訪問し、政府高官や国家警察の長官らと面会した。
オニール氏は声明で、「ハイチ国家警察にはギャングと戦うための後方支援と技術的能力がまだ不足しており、国際的な禁輸措置にもかかわらず、武器弾薬がギャングに渡り、侵略戦に拍車をかけている」と述べた。
またオニール氏は「この紛争がもたらした人道危機は壊滅的であり、インフレ、物資不足、国内避難民の急増などにより、最も弱い立場の子供や女性が命の危機に直面している」と強調した。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは1年半ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。
ポルトープランスの80%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
国連によると、今年1~5月までに全土で殺害された市民は3200人以上。この1年半で50万人以上が住居を失ったと推定されている。4~6月末の間に死傷した市民は約1400人。さらに428人が誘拐され、行方不明になっている。
ポルトープランスとその周辺でこの数年の間に住居を失った人は70万人と推定されている。
オニール氏は「警察官が5000人しかいない状態でギャングの攻撃に対処しながら治安を維持するのは至難の業である」と述べた。
国連PKOを率いるケニアは6月に先発隊として警察官400人を派遣した。しかし、国連によると、参加国が約束した要員のうちハイチに到着したのは2割に満たないという。