◎首都ポルトープランスの人口は約300万人。その80%がギャングの支配下に置かれ、機能不全に陥っている。
ハイチ国家警察は30日、ギャングと勘違いされたとみられる男性2人が暴徒に処刑されたと明らかにした。
それによると、事件は首都ポルトープランスのスラム街で29日に発生。現金数万ドルを所持していた男性2人が自警団に刃物で複数回切りつけられ、死亡したという。
警察がこの男性2人の車を調べたところ、現金と拳銃を発見。警察署に連行しようとしたところ、自警団とみられる集団に襲われたようだ。
自警団は2人を処刑した後、拳銃と弾薬1箱を奪って逃走した。
ハイチの治安は2021年7月のモイーズ(Jovenel Moise)大統領暗殺と同年8月に西部で発生したM7.2の大地震で崩壊し、破壊と暴力が蔓延している。
ポルトープランスでは1年ほど前から複数のギャングが地域の支配権をめぐって血みどろの抗争を繰り広げている。
ポルトープランスの80%がギャングの支配下に置かれ、市内の学校、企業、公共機関はほぼ全て閉鎖。2つの主要刑務所もギャングの攻撃で崩壊し、4000人以上の受刑者が脱獄した。
地元メディアは専門家の話しとして、「現在のポルトープランスでこれだけの現金を持ち歩くのは自殺行為であり、ギャングと間違われる可能性もある」と伝えている。
報道によると、警察は暴徒を追い払うために威嚇射撃したものの、阻止できなかったという。
殺害された2人のうち1人は現職の警察官、もう1人は元警察官とみられる。
国連によると、ハイチで昨年ギャングの暴力に巻き込まれて死亡した市民は確認できているだけで4500人近くに達したという。今年の死者数は3月22日時点で1554人、負傷者は826人となっている。
ハイチはここ数十年の慢性的な政情不安、独裁政権、自然災害などにより、アメリカ大陸で最も貧しい国のひとつとなっている。2010年の大地震では20万人以上が死亡、その復興が進まぬ中、21年に地震が発生した。