ロックダウン期間は3カ月を超えた
ペルー政府はコロナウイルスの蔓延を阻止すべく、ラテンアメリカで最も早く、そして最も厳格なロックダウンを課してきた。しかし、24時間当たりの新規感染者数および死者数は高い水準を数カ月間維持し、規制による封じ込めは失敗したと言わざるを得ない。
マルティン・ビスカラ大統領はロックダウン措置について、「状況は確実に改善しつつある。しかし、私たちが期待したほどの効果は得られていない」と述べた。
同国の封鎖は3月16日に始まった。これは、当時感染拡大が広まりつつあった欧州諸国より早い。政府は危機感を持ってウイルスの封じ込めを開始した。
これにより郡の境界は閉鎖、外出禁止令が課され、商店や飲食店、娯楽施設や公園などの公共施設は軒並み閉鎖された。
3月16日に始まったロックダウンは、6月末まで延長されることが決定。3カ月以上の間、国民は厳しい規制の中で生活してきた。しかし、24時間当たりの新規感染者数を抑制することには”ある程度”成功したが、死者数は以前高い水準を維持したままである。
ジョンズ・ホプキンズ大学の調査によると、26日時点のペルーの累計感染者巣は約27万人、8,700人以上が死亡した。現在同国は、世界で最も高い「超過死亡率(2020年の国内総死者数/過去数年間の総死者数平均)」を記録している。
ペルーの累計感染者数は世界で6番目に位置し、人口10万人当たりの感染者数および死者数は欧米に比べはるかに高い。厳格なロックダウンを課したにも関わらず大きな効果を上げれずにいる理由は、PCR検査の少なさにある。
同国のPCR検査率は1000人当たり6人。ラテンアメリカ諸国の一部よりは高いが、欧州、アメリカ、オーストラリアなどと比べると、明らかに低い。また、以下の理由がパンデミックとロックダウンを長引かせたと考えられている。
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マーケット
ペルー政府が行った調査(2020年実施)によると、全世帯の40%以上が冷蔵庫を持っていないことが分かったという。
同国のエコノミストとして活動するヒューゴ・ショポ氏はBBCの取材に対し、「多くの世帯が食料を備蓄できる冷蔵庫を持っていない。結果、定期的に買い物を行わねばならず、マーケットは常に人で溢れている」と述べた。
ビスカラ大統領も、国内のマーケットを「感染拡大の主な要因」と指摘している。
公式統計によると、首都リマのラビクトリア・フルーツマーケットでは、販売者の86%がコロナウイルスに感染していた。
この調査結果を受けビスカラ大統領は、「マーケットによって感染率は異なるが、おおむね販売者の50%以上がウイルスに感染している。我々は買い物をしなければならず、市場に足を運び感染する。結果、ウイルスが自宅に持ち込まれ、家族全員に広まってしまう」と述べた。
ペルーの社会研究者、ローランド・アレラーノ氏は、マーケットが営業時間を短縮したことで、人々が一カ所に集まり、蔓延を悪化させたと指摘する。政府も市場の開放時間を管理するなどの対策に乗り出したが、専門家は対応の遅さに苦言を呈している。
非公式部門
ペルーの雇用人口の約70%は非公式部門(法的な手続きを行っていない個人事業主や企業など)で働いている。この数値はラテンアメリカの中でも上位に位置する。
非公式部門の仕事はルールを度外視し、意思の赴くままに実行される傾向にある。フルーツや野菜の路上販売店であれば、人の密集するエリアを好み、移動する。新聞や雑誌の販売、靴磨きなども同様。
この部門で働く人の大半が貧困層であり、社会的距離や防護具着用ルールを遵守する余裕などない。金を稼ぎ食料を確保しなければ、飢え死にする。
ショボ氏は、「貧困層と呼ばれる人々は、毎日満員の公共交通機関を利用し、非常に混雑したマーケットなどで商品やサービスを提供しなければならない」と述べた。
銀行
ペルーの成人の約60%は銀行口座を持っていない。
政府は国内総生産(GDP)の12%規模に相当するパッケージを準備。仕事を失った人やその家族、ロックダウンによって収入が大きく減少した人への救済を実施し、称賛された。
銀行口座を持っている人に対しては、振り込み手続きで救済を届けることができた。しかし、持っていない約60%の人々は、救済を獲るために銀行へ出向かねばならず、結果、各行で大混雑が発生した。
ビスカラ大統領は、銀行がパンデミックのホットスポットになったことを認め、「この国が抱える大きな問題のひとつは、人々に救済を届ける方法が確立されていないことだ。誰もが銀行口座を持っていれば、我々はそこに現金を振り込むだけでよい」と述べた。
政府は銀行の営業時間を延長し、行列の発生を極力抑える対策に乗り出している。
社会的距離
ペルー政府の行った全国世論調査によると、貧困世帯の11.8%は過密状態で生活していることが分かった。
また、一部の当局者は、公共の場における社会的距離のルールが守られていないことを指摘している。
国防相のウォルター・マルトス氏は記者団に対し、「警察と軍隊による巡回を路上、マーケット、銀行、バス停などで行っているが、感染予防対策のルールは中々守られない。このルールを国民に浸透させることが大切である」と述べた。
同国のロックダウンは6月末で解除もしくは段階的に緩和される予定である。コロナウイルスの第一波を乗り切るためには、マーケティングや輸送の改善、社会的距離、マスク着用などのルールを国民に浸透させなければならない。そして、それを実現するためには政府の支援が必要不可欠である。
BBC News - Coronavirus: What's happening in Peru? https://t.co/voMXVz845C
— Richard McColl (@CasaAmarilla) June 26, 2020