◎首都アテネでは数千人規模の抗議デモと暴動が続いている。
ギリシャのミツォタキス(Kyriakos Mitsotakis)首相は5日、先週発生した列車の衝突事故について、犠牲者57人の遺族に許しを請うた。
中部ラリサで先月末に発生した衝突事故の原因は、駅長が線路のポイント切り替えを行わなかったためとされている。
この結果、350人以上を乗せた旅客列車は貨物列車と正面衝突、57人が死亡する同国史上最悪の鉄道事故となった。
ミツォタキス氏はフェイスブックに声明を投稿。首相として、全ての市民、犠牲者とその遺族に許しを請う義務があると表明した。
またミツォタキス氏は鉄道事業者の安全管理体制が欠如していたことを批判し、嘆いた。「2023年のギリシャでは...異なる方向に向かう2台の列車が同じ路線を走り、そのことに誰も気づかないのです...」
首都アテネでは数千人規模の抗議デモと暴動が続いている。
5日のデモでは一部の暴徒と機動隊が衝突した。アテネ警察は5日のデモ参加者を1万2000人と推定している。
AFP通信などによると、この衝突で警察官7人が負傷、5人が逮捕されたという。
暴徒はゴミ箱に火をつけ、機動隊に火炎瓶を投げつけた。機動隊は催涙ガスとスタングレネードで応戦し、中心部の広場に集まった暴徒を一掃した。
デモ隊は犠牲者を悼んで数百個の黒い風船を空に放った。ある市民は「人殺し政府を打ち負かせ」と書かれた看板を掲げて市内を行進した。
2月28日の夜、旅客列車は貨物列車と同じ線路に入ってしまった。
衝突の衝撃で旅客列車4両が脱線し、先頭2両が炎上。ほぼ全焼した。
当局はヒューマンエラーが致命的な事故を招いたと指摘。駅長を逮捕し、検察に送った。
駅長は5日に出廷、過失致死傷罪で起訴された。
駅長の弁護士は地元メディアの取材に対し、「依頼人は事故の責任の一端を認めている」と語った。
しかし、デモ隊は駅長に全責任を負わせるのではなく、鉄道事業者を「ないがしろ」にしてきた歴代政府がこの悲惨な結果を招いたと非難している。
AP通信は政府関係者の話を引用し、「国鉄の予算・設備(線路)改修不足は2010年の債務危機における国際的な救済措置後の政府の歳出削減がもたらした結果である」と報じている。
国鉄・民間鉄道組合は主要都市のデモに参加し、「国鉄は予算不足に悩み、厳しい経営を余儀なくされている」と訴えた。
キプロスからデモに参加した男性は、「高級官僚はなけなしの予算で鉄道を何とか運営している労働者に全責任を負わせるつもりだ」と語った。
専門家によると、ギリシャの鉄道網には同じ線路に別の車両が入った際に警告するシステムなどが導入されていないという。ある運転士は「国鉄担当者は線路の監視システムを改修したいと長年政府に訴えていたが、予算不足で却下されてきた」とツイートしている。
運輸相は責任を取って辞任。政権発足から3年半の間に鉄道の近代化に失敗した政府の責任を取ることとなった。
政府は3日間、国を挙げて喪に服すと宣言。犠牲者の葬儀費用を公費で賄うと発表した。
ミツォタキス氏は春の総選挙で再選を目指す予定だが、厳しい戦いを強いられるかもしれない。