◎プーチン氏は西側の制裁を克服したとしているが、ロシア政府に近い人々は経済に深刻な影響が出ていると警告している。
ロシアのプーチン(Vladimir Putin)大統領は17日、サンクトペテルブルグで開催された国際経済フォーラムの中で、西側諸国の経済制裁を「狂気と無思慮」と非難し、それは最初から成功する見込みがなかったと主張した。
プーチン氏は講演の中で米国を念頭に置き、「ロシアに対する西側の電撃経済戦は最初から成功する見込みがなかった」と述べた。「それには冷戦で勝利したと主張し、自分たちは神になったと思っている米国の制裁も含まれます...」
またプーチン氏は、「制裁はそれを科した人々に有害な影響を与えている」と指摘した。
西側諸国は対ロシア制裁を強化しつつ、自国の経済を守ろうとしてきた。しかし、一部の専門家は「西側の制裁はそれに協力しない国々(中国やインドなど)のせいで骨抜きにされ、貧しい国々の経済を支えている西側の負担を増大させた」と指摘している。
ある専門家はソーシャルメディアに、「西側諸国はアフリカを含む貧しい国々を支えながら中露と渡り合えると思っていたが、厳しい現実に直面している」と投稿している。「中露は他国がどうなろうと知ったことではなく、世界の食料・エネルギー危機で西側の負担が増していることに大喜びしています...」
プーチン氏は対ロシア制裁により、EUが4000億ドル(54兆円)以上の損失を被る可能性があると主張した。
またプーチン氏はEU加盟27カ国全体でインフレが進行し、「欧州の真の利益が損なわれている」と主張したが、詳細には触れなかった。
プーチン氏は西側の制裁を克服したとしているが、ロシア政府に近い人々は経済に深刻な影響が出ていると警告している。ロシア中央銀行のナビウリナ(Elvira Nabiullina)総裁は先月、対ロシア制裁はGDPの15%を脅かしていると警告した。
ナビウリナ氏は経済フォーラムでも講演し、参加者に、「以前のようにいかないことは誰の目にも明らかだ」と語った。「外圧は永遠ではないにせよ、経済に何かしらの影響を与えるでしょう...」
ロシアの最大手銀行、国営ズベルバンクのグレフ(German Gref)CEOも17日、ロシア経済が2021年の水準に戻るには10年以上かかるという見通しを示した。
しかし、プーチン氏は楽観的な見方を示し、ロシアに進出した外国企業を含む主要企業に対し、国内で仕事を続けるよう促した。「ロシアに投資してください。自分の家にいる方が安全です。この話を聞きたくない人たちは、海外で何百万ドルも失っています...」
またプーチン氏は、「ロシアは世界規模の食料危機に対処できる」と主張した。「ロシアは穀物と肥料の輸出を大量に増やすことができるでしょう。穀物だけでも5000万トンは増やせます...」
ウクライナ南部の港はすべて閉鎖されており、そこに滞留する2000万トン以上の穀物は行き場を失っている。タンカーでこれを輸送できるかどうかは黒海に展開したロシアの軍艦次第である。
ウクライナの国営メディアによると、東部ルハンシク州セベロドネツクでは17日も激しい戦闘が続いたという。セベロドネツクと対岸のリシチャンスクを占領されれば、ウクライナはルハンシク州を失うことになる。
一方、EUの執行機関である欧州委員会は17日、ウクライナのEU加盟候補国入りを支持すると勧告した。候補入りには加盟27カ国の合意が必要。
イギリスのジョンソン(Boris Johnson)首相は17日に首都キーウを訪問。ゼレンスキー(Volodymyr Zelensky)大統領と会談し、ウクライナ軍に軍事訓練プログラムを提供すると発表した。