◎トルコは2019年、シリアのYPGに対する軍事作戦を実施し、その後、アサド政権と国境付近の停戦で合意した。
ロシア外務省は2日、トルコのエルドアン(Recep Tayyip Erdogan)大統領がシリア北部のクルド人武装勢力を標的とする新たな軍事作戦を示唆したことについて、トルコに自制を求めた。
同省のザハロワ(Maria Zakharova)報道官は2日の声明で、「ロシアは困難な状況にあるシリアへの危険な攻撃を控えるようトルコに求める」と述べた。
またザハロワ氏は「シリア政府から同意を得ずに侵攻することは違法であり、シリアの主権と領土を侵害することになる」と強調した。「北部地域に対する軍事作戦はシリアの緊張をエスカレートさせるでしょう...」
しかし、エルドアン氏は2日、シリア北部への攻撃を再び示唆した。「我々はシリア国境から30kmの範囲に緩衝地帯を確保する新たな一歩を踏み出しました。我々はクルド人のテロリストを一掃します...」
エルドアン氏はこの1週間、シリアなどに拠点を置く「クルド労働者党(PKK)」や「クルド人民防衛部隊(YPG)」への軍事作戦を実施すると西側諸国に圧力をかけていた。
トルコは2019年、シリアのYPGに対する軍事作戦を実施し、その後、アサド(Bashar al-Assad)政権と国境付近の停戦で合意した。
ロシアはアサド政権の対テロ作戦を支援している。ロシアの民間軍事企業「ワグネル」はシリアで複数の大量虐殺に関与したと告発されている。
オスマン帝国時代から続くトルコ人とクルド人の紛争は1980年代に本格化し、数万人が死亡したと考えられている。
エルドアン氏は、YPGがシリアで活動するトルコの治安部隊を攻撃していると非難している。
ザハロワ報道官は、「トルコ国境付近で発生している安全保障上の脅威を理解している」と述べる一方、「この問題はシリア軍がこの地域に配備された場合のみ解決できる」とした。
トルコは国境付近にクルド人が接近しないよう、シリア当局と合同パトロールを行っている。
米国のブリンケン(Antony Blinken)国務長官は2日、シリア北部への侵攻は地域を新たな緊張と危険にさらすと警告した。
ブリンケン氏はNATOのストルテンベルグ(Jens Stoltenberg)事務総長との共同記者会見で、「我々はトルコの軍事作戦に反対する」と明言した。
トルコは2016年以降、シリア北部で3回軍事作戦を行い、イスラム国(ISIS)やYPGの脅威から国境付近を守るという名目で地域一帯を占領している。
YPGと連携するシリア民主軍(SDF)は2日、「トルコの軍事作戦はシリア北東部のISISと戦う我々の努力を損なう」と声明を発表した。
YPGはシリアのISISと戦う米軍主導の部隊で主導的な役割を果たしており、米国はトルコの作戦を快く思っていない。